漠然とした不安がこの地球にはある。
ただじっとしていても、心は落ち着かない。
何かをやらねば、何かに向かわねばならないという焦燥感。
それは今ここにただあるということがいかに難しいかを実感させる。
私たちは、ただここにいることが全くできない。
テレビを見ることやスマホを見ることに集中しているか、
何も見ていなければ、
頭の中を駆け巡る誰かや出来事や、
自分の後悔や非難などに明け暮れている。
その衝動たるや、凄まじい。
その根底にあるのは、漠然とした恐れ。
その恐れに気がつかないようにするために、
外のものに意識を集中させたり、
心の中を駆け巡る考えに集中させているのだ。
私たちはこの世に生まれてきてから、
ずっと訳のわからない恐れに翻弄されている。
ここにいちゃだめだ。このままではいけない。
ここじゃないどこかへ。今じゃないいつかへ。
自分の置かれた場所を否定し、自分が今いるこの瞬間をも否定している。
今にいちゃいけない。ここにいちゃいけない。どこかに行かねば。
これが私たちにささやく自我の声。
それはどこへ行っても隠れることはできない。
それに気がつかないふりはできる。
この形体の世界は、あらゆるものを見せてくれるから。
そのおもちゃ箱の中は、
いつまでも遊んでいられるほど魅了されるものがごまんとある。
千と千尋の神隠しに出てくるカオナシが、
千に向かって金の石を次々に手から溢れさせて見せたように。
だがそれは幻だ。
この世界は自我が恐れによって作り出した妄想。
だから全てが恐れの中にある。
それでこの地球にはいつも恐れの重低音が鳴り響いているのだ。
絵:MF新書表紙イラスト
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