「夜中、目が覚めてトイレにいくとき、色々考えるんだ。子供たちのことやら、自分の老後のことやら。色々考えると不安でね。。」
ぼそっとおじさんはいった。
「でもね、お日さんがのぼると、そんな気持ちは一掃されて、がらっと変わるんだ」
まぶしそうに木立を眺める。
やまんばもそうだ。夜中目が覚めると、自分の将来を考える。未来のこと考えると、
「ワクワクするなあ~」とおもうことはまずない。
「これからどうしよう~」のほうだ。
立ち上がったとき、どこかに痛みを感じたら、
「なんか変な病気だったらどうしよう」
って考えている自分に気がつくし、目覚めたとたんに、なにかしらの思考が動いているのを見る。まず、まちがいなく仕事や親や健康などの不安材料を見つけて、不安がっている。
そして朝カーテンを開けて朝の空気を吸い込むと、元気が出るのだ。
そうか。おじさんもそうなのか。
じつは浮かぶ思考は、自分で考えだした自分のものではないようだ。
「あら、そうなの?」
なんてカンタンには思えないだろうが、どうもそのようなのである。
ラジオがFM局をキャッチするように、頭にもチューナーが入っている。この空間には、いつも大量の思考が電波を発して流れている。それをたまたま似た周波数の考えを持つと、チューナーがぴゆっと合わされて、頭の中のスピーカーで音を出すようだ。特に寝ている間は無防備になっているので、カンタンにキャッチする。
「がーがー、ぴーぴー、こちら不安局、不安局。今日は健康の不安について放送いたします。では恐怖医科大の大学教授、恐怖教授にお話ししていただきましょう。」
「みなさん、身体のどんな痛みも、必ず、重大な病気がひそんでいます。今日は、目くそについて恐ろしいお話をいたしましょう。。。」
それをきいているやまんばは、
「ひえええ~~~っ、目くそ、こええ〜〜〜っ」とおびえるのだ。
この世にはお化けをよく見る人がいるかとおもうと、全然見ない人もいる。どうもそれも周波数のピントのあわせ方のようで、「お化け局」にあわせる人は、その局の周波数を記憶していて、ピッとあわせているのだ。
「宇宙人局」ってのもあるかもしれんから、その周波数をさぐっていると、そのうち会えるかもしれない。
きのうもトイレにおきながら、不安局の放送を聞いていた。きのうのテーマは「将来の不安」だったな。ここの放送局はなかなか志向がこらされていておもしろい。
おもしろいはおもしろいんだが、ちっともためにならない。なぜなら、恐怖によって、おろおろさせてくれる楽しさはあるが、よけいガックシ疲れる。おまけにいつのまにか、これは自分の考えだと思ってしまって、その感情に振り回され続けて、寝られないではないか!(自分でやっといて、なにおこってる)
だからテキトーに耳に入れて、
「あ、つまんね」と、さっさと周波数を変えるにかぎる。
やまんばは周波数を「イージーリスニング局」に変えて、スヤスヤと寝たのであった。
絵:「企業家たちの幕末維新」MF新書表紙イラスト
幕末、この世を動かした人々の資金源は一体どこにあったのか。それをひもといていくと、今の日本が見えてくる!今までになかった視点からの幕末です。おもろいで〜!