信号で待っていると、土手に生えた草に目がいった。
秋がだんだん深まって、植物たちがその姿を変えはじめている。
すこし黄色がかってきたイタドリの緑の葉っぱが、赤い水玉模様を作っていた。あいらしさにおもわず見入る。あっちにもこっちにも。
緑一色から、赤い水玉模様に服装を変えたイタドリの葉っぱたち。モスグリーンの地の色に、レンガ色の大きな水玉模様を大胆にあしらった、ウールのコート。
茎や葉脈が赤く、それがなぜか赤いヒールを思わせる。
まるで芯の強いOLみたい。
その横には季節外れのよもぎが凛と立っている。
青みがかった緑色のスーツを着た中年の紳士のよう。
勝手な妄想の中、じーっと草たちに見とれていると、信号が青に変わっていた。あわてて渡る。
柿の葉っぱなんか、芸術家の極みだ。もうどの葉っぱを手にしていいかわからなくなるほど、最高傑作だらけ。葉っぱの一枚一枚に向かって、その美しさをほめたたえたいぐらい!でもそんなことしてたら、日がくれちゃうね。
いつもこの美しさをぐっと所有したくなる衝動にかられる。
けれども家に持ち帰ったかれらは、ほどなくその美しさを終らせていく。
それもまた潔いかっこよさ。
だからじーっと目に焼き付ける。
あんたらの美しさをどれだけ味わっているやつがいるか、わかってる?
ここにへんな一人の人間がいること、かれらは知っているのかなあ。
まあ、そんなことへともおもわず、かれらはかれら自身がその美しさを謳歌しているのだろう。
今日の作品は先日制作した野葡萄。
わたしの絵の生徒さんが、昔スケッチしたという水彩画の野葡萄の絵を見せてくれた。それがとても強烈な印象を私に残した。
ふしぎなカタチの枝、葉っぱ、カラフルな野葡萄。
私は植物の正しいカタチを描くことが苦手。それはいくら正しく描こうとしても、かれらの調和のとれた美しさにはかなわないのだもの。
だから私は私の印象で、かれらを表現してみたい。
それは今日であったイタドリのOLさんのように。