「年いったき。。。」
母のことばには、必ずその枕詞がついた。
1年ぶりの里帰り。だんだん親の様子を見に行く回数が増えてくる。
それはやまんばが、年いったき。。?
年いったき、身体が動かん。
年いったき、お化粧のノリが悪い。
年いったき、よう覚えん。
年いったき、ようわからん。
年いったき、字が書けん。
年いったき、みにくうなった。
年いったき、
年いったき、
年いったき、
年いったき、。。。
友だちからもちらちらとそんなことばが見え隠れする。。。
だれか、年いったき、若うなった。というやつはおらんのかー!
この枕詞を言う意味はどこにあるのか。
年いったき、はなんにでも使える。
年いったき、コーヒーがまずうなった。
年いったき、仕事が減った。
年いったき、離婚した。
だいたいネガティブなことばにのっけられる。
するとそれがそのネガティブな事実のいい訳になる。
ほらー、ほらね。やっぱり。年いくって、しんどいことなのよお~って。
自分がうまくできないことを、人に納得してもらうために使うには便利なことばだ。
そして、そのできないことを、自分で納得するために使う。これが一番の利用方法だ。
人にも説得できて、自分にも納得させられる。うん。いいことばだな。
これはちょっと年がちがう人にも使える。
30代に、50代のおばさんが、
「あたし年がいったから、動けんのよ。あなたはまだ若いから」
なるほど。年がいったから動けんのね。
するとその50代に、60代が言う。
「あたし年いったから、動けんのよ。あなたはまだ若いから」
なるほど。
すると、その60代に、70代がいう。
「あたし年がいったから、身体が動けんのよ。あなたはまだ若いから」
すると、その70代に、80代がいう。
「あたしは年いったから、身体が動けんのよ。あなたはまだ若いから」
自分が動けんことを、えんえんと年がいったせいにし続けることが出来るのだ。
それは自分より年下の人に、なにげに自分があなたより年上よ、と圧力をかけることもできるし、その動けないことのいい訳に出来るし、自分にも言い聞かせることが出来る。
だからずーっと心の中で言い訳をし続けて、その自分で発した言葉を耳で聞き続け、ことあげして現実化し、どんどん衰えていくことをよしとできるのだ。
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