「森に住むもの」和紙、水彩
絵の制作がひと段落すると散歩に出かけた。
アスファルトの道から一歩森の遊歩道に入ると、
突然空気が変わる。
それまで私の心は人間界にいた。
「薄着してきてしまった。寒い。
風邪引いたらどうしよう。。。」
森に一歩入る。
ひんやりとした空気に包まれる。
「あ~。気持ちいい。。。」
理屈で考えたらさらに温度は下がっているのに、
そこに恐れはなかった。
自分はカラダだという感覚が消えている。
アスファルトの道の上にいた私は「私はカラダ」だった。
森に入ると、私は森になった。
森全体が喜びに満ちている。
そこにたくさんの生き物たちがいるだろう、
その全てが一体になって私に笑いかける。
命が湧き上がってくる。
さっきまで人間界の由無し事に心が奪われていたのに、
もうその面影はない。
何か形のないものとともにいる。
穏やかでウキウキとふわふわと歩く。
その日の朝も同じような感覚で起きた。
社会が遠くにあった。
世界がオブラートに包まれて、輪郭がはっきりしない。
音も耳栓をしながら聞こえている感じ。
その日に何をする予定なのかわからない。
でも体は動いていた。
小さい頃の私を思い出した。
全てがもわんもわんとしていて、輪郭がはっきりしない。
親や先生に怒られて、
必死でこのカラダに入らなきゃ!とトライしていたあの頃。
そしてある日ピタッと「このカラダ」に入ったのだ。
それから世界ははっきりと輪郭を帯びた。
社会が私に迫ってきた。
その「カラダ」に入る前のあの感覚は、
今のこの感覚だったんじゃなかったろうか。
今、森の中にいて、社会は遠くにあった。
私と森は一体で、、、
私は森で、
森は私で、
平安と喜びがある。
人の声が聞こえてきた。
近所の犬を散歩させているご婦人と、
山歩きの男性が話をしている。
そこで私は人間に戻った。
和紙で制作した作品のオンラインショップができました
ペーパーバックの表紙を制作した原画のオンラインショップです
2 件のコメント:
朝目が覚めてすぐの数秒間に似ているなと感じました。布団の中でだんだん今日の仕事の煩わしい予定が浮かんでくる感覚。
ユウキさん、ありがとう。
朝起きた時の感覚に似ているかもしれませんね。そしてだんだんこの世界に戻ってくる。。。
その違いを知っているのは大事ですね。
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