2008年11月28日金曜日
9.11の時
これは私の友達が経験した9.11。あれから時がすぎて、彼女から直接聞いた話もだんだん消え入りそうになる...。だからぜひ書いておきたかった。
『9.11の時』
「あんた、今テレビつけてごらんなさい」
朝、日本の母からの突然の電話。テレビをつけると、そこには映画のようなシーンが広がっていた。ツインタワーの片方のビルが燃えている。一体何が起こったのだ?ぼーっと見ていると、もう一方のビルに何かが突っ込んだ...。
9月11日2001年の、あの朝のことは忘れられない。
私はニューヨークにいた。そしてあのビルには、同じアパートに住む友人が働いていた。
彼女は第2ビルの80階あたりにいた。となりのビルが燃えているのを職場の仲間と呆然と見ていたそうだ。そのときは、まさか自分のビルにも何かが起ころうとは夢にも思わない。しかし、とりあえず全員が避難するということになった。皆がそんな軽い気持ちだったという。
彼女は最初、ランチにでも出るようなかっこうで下に降りようとした。いったん歩き始めて、ふと所持品全部を持った方がいいような気がしたので、大事な書類も上着も全部持った。
緊急の避難と言えば、エレベーターより階段である。ところが階段は人でごった返していた。すると突然エレベーターのドアが開いた。中から、こっちこっちと手招きする黒人のおじさんがいる。彼女はその手に誘われるように、エレベーターに乗り込んだ。そのエレベーターはビルのまん中あたりの階で終わる。一階まで降りるには、そこから別のエレベーターに乗り換えなければいけない。降りると、すぐ下に向うエレベーターがドアを開けて待っていた。彼女は何も考えず、そのエレベーターに乗った。
一階のロビーに降りたとたん、突然上の方でドーンという巨大な破壊音がした。冒頭の、私がテレビで見たあの瞬間である。表にでると通りは大パニックだった。上からバラバラとガラスや何かの破片が降ってくる。人とぶつかり、転んで、膝から血を流しならがら、地下鉄とバスを乗り継ぎ、我が家までやっとの思いでたどり着く。事故のあった直後は、まだ交通機関は動いていた。アパートのテレビをつけると、さっきまで働いていた二つのビルは、跡形もなく消えていた....。
一体何が生死を分けるのだろうか。
「あの時、階段を選んだ人たちは、みんないなくなってしまった...」と彼女。
あの時、なぜおじさんが手招きしたのか。あの時、なぜもう一つのエレベーターは待っていたのか。あの時、なぜ地下鉄は動いていたのか。あの時、なぜ彼女は荷物を持ったのか.。あの時、なぜ....。
すべての偶然は、単なる偶然ではないのかもしれない。今こうして無事である彼女の存在が、何かをいい現わしているような気がするのはなぜだろう。
今はその『偶然』に感謝するだけである。
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