幼い頃、「この世には私しかいない!」と感じて、がくぜんとした。
目の前に見える世界が広がっているだけ。
私がぐるっと向きを変えると、そこに世界が現れるだけ。
見えていない所は、なにも、ない。自分の後ろも、なにもない。
母のように見えるものも、父のように見えるものも、ただそこに見えているだけで、かれらの後ろには何もない。ハリボテの世界。
この世にはたった一人、私がいるだけ。
という実感。
それが恐ろしくて、いつも母の背中を触っては、
「あ、あるある。ここにおかあさんがいるんだ」
と、確認していた。
あれから50数年。
私以外に人がいるという証明は、いまだに誰もしてくれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿