父の3度目のがんの手術のために高知に帰って来た。
注:お食事中の方は、今日の記事はちょいとスルーして下さいまし。
2度目の手術の時に開けたお腹の筋肉がその後あるときパカッと割れて、そこから内臓が飛び出して来ていたのだ。このまま置いておいては皮膚から内臓が飛び出してしまうのと、腹の上にあった4センチほどの癌が皮膚に触れて、痛いらしいので、その応急処置として(にしてはすごい手術のよーに見えるが)緊急にやった。
「どや。すごいやろ」
手術の前日、飛び出したお腹をみせてくれた。
「すげー。これ、なに?」
「ここら辺が癌よ。ほんで、この下が全部内臓よ」
「ウソ!これが内臓??」
動揺する自分の心に気づきながら、でこぼこした父のお腹を触った。固い所が癌だそうだ。
「どーやってへっこますが?」
「癌をとって、両脇に開いた筋肉を引っ張るがよ」
「引っ張れるが!?」
「しらーん。けんど、引っ張れんかったら、人工のなんかを貼付けるらしいが」
癌以外の手術をあわせると、この5年間で4回目の手術。なんとなく慣れて来ているようにも見える。落ち着いた様子には見えるのは、娘へのええかっこしいか?
術後、外科の先生の説明を受ける。
オペ室から出てきたばかりの先生は、ドラマに出てくる格好そのまんまだった。
でかいがっちりした体格の、いかにも外科の先生ってかんじがした。
三日月型の金属のお皿を指さして、
「これが癌。これが痛みの原因。皮膚の下にあったからね。」
目の前には赤い血の滴る美味しそうな肉片が3つ。一見するとホルモン焼きの肉に見えた。
一番大きい肉片をはさみで触りながら、
「これが筋肉の下にあったから筋肉を寄せることができないのでとった。もうひとつは、やはり腸にくっついていたから、腸と一緒にとったがよ。これが腸。ほら、ここにうんこがあるやろ?」
はさみでうんこをぽろっと触る。
「おお!ほんまや!」
覗き込んでた身体が一瞬後ろにそる。
「腸は閉じました。ほんで、ここまでいじると、メッシュを入れるといろいろ合併症が起こるかもしれないので、本人の筋肉だけで、ガッチリ閉じました」
手術中の待ち時間に、病院内の広報誌で、この先生がアーチェリーをやってる記事を読んでいた。弓をぐーっと引っ張ってる写真をおもいだす。彼の「がっちり閉じました」の言葉に信憑性を感じる(笑)。
横で説明を聞いていると彼の存在の暖かさを感じる。にこりともせず、顔はかなり怖いが、なぜか安心感を与える雰囲気が漂っていた。
病室に戻って来た父は、ベッドが揺れるぐらいブルブル震えていた。冷たいオペ室の中で、術中はすっぽんぽんらしい。体温がぐっとさがる。術後直後は34、2度。からだは自らの身体を震わせて、体温を上げようとしているのだ。
電気毛布をかけ足をもみ、どんどん体温が上がってくる。30分ほどで平熱に戻った。
それにしても体中にチューブがある。ヘタに動くとどっかのチューブが外れる。
一部が横にある機械につながっている。
「この数字は何ですか?」
「これは心拍数です。その下が血液中の酸素濃度で、その下が血圧、そして。。。」
と色々教えてくれる。
その他、廃液を出すクダ、点滴のクダ、痛み止めのクダ、血圧を調節するクダ、おしっこのクダ、血を出すクダ、足のマッサージのコード、、、、あとなんだっけ?
もの凄い数のクダがあり、それを調節し、管理し、あっちに移動させ、こっちに配管し直し、なんなくこなす看護士さん。
人体を一カ所切ると、いかにバランスが崩れるか、そしてそれを元に戻すためにどれだけの労力を使うのかを教えてくれる。医療の現場では、この複雑なシステムを、間違いのないように日々こなしている。
ちっちゃいとき、
「大きくなったら、看護婦さんになる~」
などと、ちょっとだけ言ってた自分がおそろしい。
世のため人のためにも、ならんでよかった。
不安定な時期もあったが、だいぶ状態が落ち着いて来た。翌日起き上がった様子を見て、こっちに帰って来た。
電話すると、その後病院内を歩いたようだ。
父は頑張り屋さん。目標に向かって確実にそれをこなしていくタイプ。
何度かの手術のときも、人並み以上に頑張って医者や看護士を驚かせて来た。
今新たな目標をもった。退院すること。
きっと彼のことだから、あっというまに退院することだろう。
さて。
その次の目標は?(笑)
「不屈の人黒田官兵衛」/MF新書表紙イラスト
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