ある日、ヒヨドリがミツバチを食べているのを見た。
「え!?」
それまで原っぱでのんびりしていた心が、一気に動揺する。
「やばい。ミツバチが全部ヒヨドリに食べられちゃう~!」
二年前までやっていた畑のことを思い出していた。
この時期になると、大勢のヒヨドリがやってきて、
ブロッコリーや白菜などの葉っぱという葉っぱを見事に食べ尽くしてくれる。
ブロッコリーの蕾は食べないが、スケルトンになった葉っぱの周りにはフンだらけ。
白菜も芯まで食い尽くす。
ミツバチたちも全滅させられたらどうしよう。
怖くなった。
私の中に、これは大事で、これはどうでもいい、
という優先順位があった。
大事なものを守るために、網を張ったりネットを被せたり。
ありとあらゆることをやって、
その「大事なもの」を守ってきた過去がある。
しかし健闘むなしく、自然界は私をあざ笑うかのように、
その「私の特別なもの」を根こそぎ持っていった。
その戦いに疲れて畑をやめたのに、今目の前の出来事に同じ動揺が走る。
起こる動揺は、私に何かを伝えようとしている。
この時が最大のチャンスだ。
その二、三日後、ミツバチの巣箱にネットや網がかけられた。
人間という営みには、必ず搾取が行われる。
畑で野菜を育てるために草を抜く。
ミツバチを守るためにネットをかける。
あの網は目が小さいから、ミツバチたちが出入りに困ってる。
もっと大きな網目にしないと。。。
複雑な心が沸き起こる。
ああ、まただ。
大きく息を深く吸い込んで、ゆっくり吐く。
そして静かにその映像を観る。
私たちはミツバチから蜂蜜をいただく。
野菜をいただく。
それはヒヨドリも同じ。
そこに解釈を与え、差異を作り出し、優先順位を与えるという判断をしているから、
それを実在させ、そして苦しむ。
私も、ヒヨドリも、ミツバチも、同じ一つの心でできている。
私の考えが、今見ている世界を作っているのなら、それは夢。
ほんとうは何も存在していない。
それが見えた時、すべてが等しく同じになった。
絵:もくれん