ストープの上にかけたヤカンから、ゆらりと湯気が立つ。静かな音楽を聴きながら、ゆっくりと時間が過ぎる。
2月も末になって、太陽が少しずつ高くなり、我が家にやっと日が入りはじめた。レースのカーテン越しの柔らかい陽射しの中、制作をする。
今年もまた5月に自由が丘で個展を開く。その準備に毎日紙と向きあっている。
去年の5月、展覧会を開いたとき、久しぶりに紙を切って制作をした。じつはそれまで自分に封印していたこと、紙に色をつけること、そして和紙を使うこと。この二つのタブーをといて、11年ぶりに紙を手にしてみた時、なにかがほどけた気がしていた。
おもわぬご縁で、また展覧会を開くことになった。
紙に色を付け、和紙にも色をつけ、それをペンカッターで切ったり、ちぎったり。今までやらなかったことを後悔するほど、たのしい。なんだ。こんな効果があったのか。お!ここまで可能性があるんだ!などと、今、紙の可能性に夢中になっている。
こんなふうに絵を描く楽しさを味わっているのは、久しぶりだ。絵を描くことはこんなに楽しいことなのだ。。。。そう思う自分が笑えて来る。
イラストレーターという仕事は、依頼があって始まる。クライアントの意向に添って、絵を描くのが仕事だ。その依頼にうまくそえば、うれしく、そしてそれが自分が気に入ったものであれば、よろこびもひとしお。
だが時には、なかなかクライアントの意向にそえなくて、自分の無力感にさいなまれ、あせり、くるしみ、あえいで、制作することもある。
絵は、こうやれば必ずうまくいく、などの方法論などない。その手探りのなかで、30年間続けて来た。
いつのまにか絵を描くことは、私にとって楽しいものではなくなっていた。。。
そんな中、去年の5月の個展に向けての紙で制作は、なにかのスイッチが入った。
そしてその時を境に、イラストの仕事が途絶えたのだ。。。
一番ショックだったのは、私が駆け出しのころからお世話になってたクライアントさんからの突然の仕事の中止だった。
自分に何が起ったのだろう。。。なにがいけなかったのだろう。。。悩んだ。だけど悩んでいる場合ではない、生活費をかせねば。。!
今はバイトをしながら生計を立てている。といってもイラストの報酬から比べればかなり少ない。アメリカの出版社からの仕事は時々あるので、それでなんとかしのいでいるのが現状だ。
しかしこのバイトからあらゆることを学んでいる。
人の心理、社会の構造、今の社会で生きるとはどういう事か、人々が毎日どういうパターンで生きているのか。。。人々の苦しみ、葛藤、逃げられないもどかしさ。。。
そういう視点は今まで持てなかった。
今まで持てなかった視点をもらうことで、あらたな側面が見えて来る。
そして、そんな中だからなのか、シンプルに、絵を描くことのよろこびを味わっている。
なににも左右されず、誰の目も気にすることなく、ただ描けるよろこび。畑で草を見、道ばたで小さな花を見つけ、それに歓喜し、それをただ絵にする。
本当に忘れていたな、そうおもう。
今度の個展は、ちょっと今までと違う趣向をこらしてみようと思っている。
そしてこのブログにも書いているような、つくしが思っていること、感じていることを展示して行きます。私の中の世界を丸ごと見せちゃいます。
ついでにトークライブもやっちゃいます(笑)!
おいおいまたお知らせいたします。
またブログ、のぞいてみてください。