2015年3月3日火曜日

才能は人の目を気にして消えていく



あるとても才能のある知り合いが、依頼仕事を受けて作品を作った。
しかしクライアントの意向がはっきりせずコロコロと意見が変わり、出来上がった作品は彼女らしさのないものになった。

クライアントは、彼女の大胆な発想の作品にひかれて依頼したはずだ。だが実際自分がお金を出すとなると、へんなものを作られては困る。なのであっちこっちのサンプルを出して来ては彼女に見せる。
いつのまにか、どうして彼女に頼んだのかが見えなくなっていた。

これは非常に難しいことだ。
イラストレーターなどは、必ず依頼されて作る。自分のもち味と相手側の要求をうまくブレンドさせて、プラス相手側の思う以上のものを提出しなければいけない。やまんばもいつも彼女のような葛藤を抱きつつ作って来た。


みんなそれぞれに才能を持っている。自分がまだ知らない隠れた才能は山のようにある。けれどもその才能は、人の目や評価を通している間に、消えていってしまう。一瞬の瞬きは、本人が「お金をもらっているから、まちがいがあっちゃいけない」とか「お金を払っているのだから、まちがってもらっちゃこまる」というお金を通すことによって、ゆがんでくる。もしこの世にお金というルールがなかったら、もっとそれぞれが豊かに信頼をもって依頼し、依頼され、その才能は存分に発揮されるのではないだろうか。


「人の目」を気にすることによって、私たちは自分自身を小さくさせている。それはわたしも日々身につまされる。好き勝手にやっているようにみえるだろうけど、じつは気の小さいやまんばなのだ。

その気の小ささのせいで、みんな自分に思いっきり制限をかけている。
冒頭の彼女もまた評価や人目を気にして苦しんでいる。

でも作品を作る人間は、どこか大胆でふてぶてしい部分を持っていないといけない。だっていつの世もそれまでの価値観を変えて来たのは、そういう前例主義を壊して来たものたちなのだもの。彼女の作品はその常識をすでに打ち破っている。

自分自身への制限は、心の声を聞き流す術を覚えることで解け始める。



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