夢を見た。
高知の台所である大橋通に私はいた。
いつもは活気にあふれているアーケードの中、すべてのお店のシャッターが閉まっている。買い物に来た私はとまどう。ほどなくして、そのアーケードの通りのまんなかに、市場のマーケットのように、野菜やお漬け物や焼き魚などが堆く積み上げられていった。
お店の人に「いつもとちがってますねえ、どうしたんですか?」
と聞くと、
「もうそろそろお店をやめるんで、店じまいをかねて、こうやって並べてます」
という。
小さい時からこの商店街が大好きで、いつもここをウロウロしていた私。
高知から京都、東京、そして遠くはなれてニューヨークくんだりに行っても、いつも心にあった大橋通。その、世界でいちばん私のお腹と心を最高に満たしてくれていたこの商店街が終る???
そこで野菜、お漬け物、焼き魚を買って、なぜかいつもとちがう家に持ち帰ったところで目が覚めた。
「私の高知が消えていく。。。。」
その言葉に自分でびっくりした。
私の過去が、消えはじめている。
記憶がこの世界を存続させている。
私という記憶、私は女性で私は日本人で私は58歳で。。。
という記憶にもとづいて私というアイデンティティができあがる。
そして高知は私の記憶の最大のものだ。甘いも辛いも一緒くたにいっぱい抱え込んでいる重い荷物。
コースの訓練によって、自我が持つ観念の消滅が徐々に起こりはじめているが、こんなふうに自分の過去が消滅していくのを実感したのははじめてだ。
私の記憶にある大橋通は、活気にあふれていた。しかし夢の中のご主人は言う。
お店をやめるんでと。
まるで私の記憶の中に存在していた大橋通の役者たちが、店じまいをはじめたかのよう。
「そろそろつくしの中にいる僕らは、主人(つくし)が必要としてないみたいなんで、店じまいでもしますか」というように。
過去にしがみつきたい私が言う。
「やめないで!大橋通!消えないで!高知!」
けれども、もうひとりの私が言う。
「さあて。どんどん軽くなっていこうか」
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