2011年1月19日水曜日
おばあちゃん力
近所に70半ばのおばあちゃんがいる。イエローラブを飼っている。そのおばあちゃんが道ばたでうれしそうに言う。
「今日も高尾山の頂上までお散歩行ってきましたのよ」
お、お散歩ってねえ。頂上まで片道1時間半はかかるんじゃなかったっけ?往復3時間かけて登ってかえってくるって。。。それも巨大な犬を連れて。このところの日課のようだ。
まだ子犬だったイエローラブを連れていたそのおばあちゃんと最初にであった時、
「あんた、その犬、ムリ」
と思ったものだった。
一人暮らしが寂しかろうと、息子さんがくれた子犬だった。70代の小さなおばあちゃんにイエローラブ?むちゃだ。しかもそんな犬飼ったこともなかった人のよう。ラブは元気がいい。じっとしている犬種ではない。散歩は彼らの絶対的必需品。アメリカで大型犬の散歩に日々ふりまわされるニューヨーカーを何度見たことか(わたしもだけど)。
きっとえらいことになるぞ。。。とおもっていた。
あれから2年。おばあちゃんは、日々たくましくなっていった。わが家の前に小川を挟んで遊歩道がある。その道をおばあちゃんは毎日ラブとお散歩。大きな声で叱りつけている声もよく聞こえた。しかしこの二人は時間とともにどんどんひとつになっていく。今はもう完全に一心同体になっていた。
「何度この子に転されたかわかりません」笑って答える。
おばあちゃんの顔はいつの間にか、浅黒く健康的で、前より顎がガッチリしていた。あの瞬発力のあるラブを一瞬にして手綱で引き止める力。一日何キロもあるいて山を往復する健脚。イエローラブにありがちな肥満は一切ないシャープな身体。どれだけ散歩させているか一目瞭然。今、この人と綱引きしたら、私絶対負ける。
「冬山は影のところが凍っちゃって滑って怖いのよね~」と軽く言ってくれる。しかも大型犬つれて。山の中、あらゆる野生動物がいる。突然どっち向いて走り出すかわからないのに。
そんなこと人に言っちゃったら、とんでもない。やめてちょうだい!といわれるだろう。今はありとあらゆることを転ばぬ先の杖といって、やめさせてしまうからだ。
先日スーパーで、もうちょっとでぶつかりそうになった別のおばあちゃんに言われた。
「わたしはねえ。転んじゃダメなのよ。お医者さんに言われたの。転んだら最後だって。転んだらいろんなところが壊れるでしょ。するともう寝たきりになるのよ。だから私は絶対転んじゃダメなの」
そういって一歩一歩確認するように歩いていった。
人って不思議だね。
絵:ロクシタンメンバーさん似顔絵
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4 件のコメント:
確か、クッキーのオーナーさんは実は、相当な山登り好きですよ。うろ覚えだけれど、日本百山とかを制覇したとか・・。記憶違いじゃなければ。ですが・・。
前の犬が生きてた頃も、藤棚の先にあるキャンプ場まで散歩で行って、帰りはクッキーがバテテましたから。
すごい!
人のエネルギーって、犬をも超えちゃうんですね。
母に話したら、「山に登る人は、服装に無駄がないからわかる」と言われました。その人の姿勢が姿にも現れるんですね。
そうなんですよ。山のプロフェッショナルは、無駄がない。命に関わるもんねえ、緊張感が違う。
私も山岳部にいた頃、そんな話をよく聞かされました。
それはなんにでもいえるよね。
あー、お耳が痛い。無駄だらけな私。
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