2008年9月4日木曜日

ホッキョクジリス



昨日キャンプから帰って来た。
久しぶりのキャンプはご老体にはキツい。でも、いつもは家の中でゴロゴロするだけの私をひっぱりだしてくれた若夫婦に感謝したい。
彼らの誘いがなかったら、一歩たりとも野宿(キャンプだろ)などしようとも思いもつかない。思わぬ非日常に、いつもと違う感覚が呼び起こされた時間だった。
火一個つけるにも時間がかかる。鍋忘れたり、フライ返し忘れたり、いつもはあたりまえのようにそこにある道具たちがいない。おもえばいつのまにか私たちは道具だらけの中で生活しているんだなあ。ちょっと何か足りないと、「あ、不自由だな」と思ってしまう。おいおい。キャンプってえのは、その不自由を楽しむためもあるんじゃないのか?と自問自答する。

彼ら夫婦は何度かキャンプ経験があるので、その時間をゆっくりと楽しむことが出来るらしい。文明をちょっと離れたところで、不自由を楽しむ。
「火をおこせさえすれば、あとは何にもいらないんだ」と嬉しそうに彼はいう。
たらふく肉料理を食べたあとで、焚き火を囲みながら、ワインを飲む。頭上は満天の星。樺太アイヌにある『トンコリ』という楽器も持って来ていた。富士山のふもとの湖畔で聞く、アイヌの音楽。ちょっとちょっと、これ、出来過ぎじゃないの?
ピント外れの私たちも、いっしょになってアイヌのウポポ(唄)を口ずさむ。火はすべてのものをオッケーにしてくれるのかもしれない。

夜中、テントから外に出てみると、夜空一面に星が輝いてた。ああ、狭いテントの中で狭い寝袋に入って寝るより、このまま大の字になって大地に直接寝そべりたい!そう強く思った。

うちの近所にフツーに野宿する友達がいる。彼らはテントはおろか、寝袋さえ持たない。気の向くまま山に入って、好きな場所で好きに夜を明かす。まさに太古のニンゲンがやってきたことだ。その文明から逆行するような彼らの行動の原点を、今、ちょっとだけわかった気がした。私の遠い昔の記憶が、呼び起こされたような瞬間だった。

絵:アラスカのホッキョクジリス けんぽ表紙掲載
野性の彼らも、今ごろ満天の星を眺めているのだろうな。
オーロラも。

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