ニューヨーク時代に、数々のラブロマンスやミステリーの表紙の仕事をしてきた。
その頃の手法は、今のパソコンでの仕事と違い、
紙を切って貼るというアナログな手法。
ファンシーペーパーという色がついた紙を絵の具がわりに使っていた。
一口に「色がついた紙」といっても、色紙じゃない。
ありとあらゆるテクスチャーがついたラブリーな紙なのだ。
マーメイド、レザック、ツムギ、岩はだ、などなど個性豊かな存在感のある質と色がある。
それを細いシャープなカッターで切って、貼っていく。
渡米する時、日本の紙屋さんであらゆる紙が揃ったのだから、
きっとアメリカにもあるだろうとタカをくくっていたが、実際住んでみてびっくりした。
ない!全然ないのだ!
そりゃあ、さすがアメリカ、中にはチベットの紙など、
なかなか手に入らない面白いものもあることにはあるが、色もお粗末なら、質も悪い。
ある日、ソーホーに新しい紙専門の店ができた。
喜んで出かけてみると、なんとそこで高級な紙として売られていたのは、
全部私がいつも日本で買っている紙だった(笑)。
結局、紙問屋の竹尾さんからまとめ買いをして、船便で大量に送ってもらい、
アメリカで日本の紙を使いながら制作をしていたのだ。
さて、その紙は日本からアメリカに送って、
そして帰国の際また日本にその紙は戻ってきたが、
まだその紙たちは色褪せない。
日本の紙の質の高さは、その昔の和紙の時代から脈々と受け継がれてきている。
そしてあの頃、ラブロマンスといえば、
「風と共に去りぬ」の劇画タッチのイラストが主流だったアメリカ。
マッチョな男性がか弱い女性を抱きかかえるという保守的なイラストが主流だった世界。
それが面白くねえなあ~と思い、逆に女性が男性をリードしていくというやり方、
そして大胆でポップな絵で勝負したのが私のイラストだった。
これも紙を切って制作すると、シャープなラインが出るという相乗効果を出していた。
あの時、先見の目で私のイラストを選んでくれたアートディレクター・Gailに心から感謝する。
さて前置きが長くなりましたが、
ニューヨークで制作してきたアメリカのペーパーバックの表紙ために作られた原画を、
オンラインにて売ろうと思いました。
テクスチャーの面白さは、オンライン上でどこまで伝わるかがわからない。
印刷物になっても、その切り絵としての魅力は、実際原画を見てもらわないとわからないところが、もどかしいところであります。
もしご興味があれば、ご一報ください。
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