19年前、私はニューヨークは14丁目の地下鉄のホームで電車を待っていました。
静かな日本のホームと違って、レールを走る電車のきしむ音やブレーキ音など耳障りな騒音がけたたましく鳴ります。そんな騒音の中で、私はなすすべもなく佇んでいました。
その時ふと何かの視線を感じて顔を上げた時、
私は向かい側を走り出した電車の一点に釘づけになりました。
電車のドアの向こう側に立っている髪の長い男の人と目があったのです。
その大きな目をした彼は、私のことをじっと見ていました。
互いに目を合わせたまま、電車は走り去って行きました。
このたった数秒の間に、ある物語が私の中に入り込みました。
「彼は人ではない。。。!」
そう直感しました。
彼はこの汚い駅にずっと住んでいる「何か」でした。
それから私の中に入り込んだ物語が頭を離れず、家に帰り着くとスケッチを描き始めます。
悪戦苦闘しながら、ある絵本を作り上げました。
それがこの『ちかてつのおばけ』です。
アメリカの出版社に何箇所か営業しましたが、なかなか受け入れてもらえず、帰国したのちにも当たってみましたが惜しいところで終わってしまい、この話はお蔵入りになっていました。
去年の年末、記憶から消えていたこの物語をふと思い出して、動画で公開してみようと思いたちました。主人も快く編集をしてくれ、あっという間に出来上がりました。
絵本というと、子供のもの。
この物語は子供向けではないかもしれませんが、子供もまた小さな大人です。大人の世界で一生懸命に生きています。
そんな小さな大人に、日常では見えないものの中にこそ真実があるかもしれない。
そんな可能性を感じてもらえれば嬉しいです。
もしご興味があれば是非ご覧ください。
あの時、あの場所で出会った「彼」に、この物語を捧げます。
2 件のコメント:
つくしさま
こんにちは。香港さんです。
素晴らしい絵本の動画をありがとうございました。
僕たちを日々悩ませているように見える自我(おばけ)は、
本当は愛の存在(聖霊)となって一緒に天国へと戻って行きたかったのだな、と思いました。
この動画を見て、自我は忌み嫌うものではなく、愛の存在だったんだ、
そして、僕自身が《女の子》となっておばけを愛に返すのだな、と感じました。
身勝手な解釈をしてごめんなさい。
改めて、ありがとうございました。
追伸
いつもすばらしい絵を拝見させていただいております。
特に、月見をしている二人のお侍さん?の画がすごく平和な感じがして大好きです。
うっひょ〜。香港さんだ〜!
お久しぶりです。
びっくりしたなあ、もう〜〜。
動画見てくれてありがとうございます!
コメントくれる人滅多にいないんで、気がつくのが遅くなってすいません。
この絵本は、20年前に思いついたものでしたが、今見ていると、まさにおばけは自我そのものですね。
香港さんのその感じ方、嬉しいです。そう思っていただけることがありがたいです。
実はこの物語の最初のアイディアは、おばけは元々は守護神そのものだった!と自分自身に気がついた話にしていました。
ちょっと子供には難しすぎるかと思い、今のものに変えました。
でもどちらにしても同じことなのでしょうね。
月を見ているあの侍二人の絵ですね?
私も大好きな絵です。
見てくれてありがとうございます。
私も香港さんのブログ、毎回拝見させていただいております。
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