まだ私がニューヨークにいた頃、英会話の教室に通っていた。
57丁目のセントラル・パークのすぐ隣にある大きなマンションの一角。大きなリビングの隣にある小さなキッチンの片隅に丸いテーブルがあり、そこでマンツーマンで英語を習っていた。
私はあまり良い生徒ではなかったが、シーガン先生は、私の仕事をとても尊敬してくれていた。
私の絵本「ちかてつのおばけ」を英語訳してくれたのも彼女。彼女は日本語が一切できない。私のたどたどしい英語で、絵を見せ、ニュアンスを伝え、何を言わんとしているかを伝えるのに苦労したものだ。
先日動画公開したその絵本に、英語字幕のものも作ろうということになった。
近所に住んでいる翻訳家の方に、英語訳のチェックを入れてもらう。
シーガンさんに英語訳をしてもらってのち、私は何度も文章や話の内容を変えているので、ニュアンスが少しづつ変わってしまっていたからだ。
「とてもいい文章。直すところがないわ」
チェックを入れてくれた方のその言葉に、シーガンさんの私への想いが伝わってきた。
国語の先生だった彼女。どんな思いでこの絵本の訳を考えてくれていたのだろう。あの小さなキッチンの片隅で、6年間続いた彼女との時間を思い出し、胸が熱くなる。
その後二人の翻訳家の方に、少しだけ手直しをしてもらい、
英語字幕付きの絵本の動画『The Monster in the Subway station』が出来上がった。
一人ではできない。
そのことを今回私はとても感じた。
たった一つの絵を作ることさえも、私が一人で作っているわけではないのだ。
物語を生み出すことになった、あの14丁目で出会った「彼」。インスピレーションをくれたニューヨークの街。私の過去に出会った人々からもらったたくさんの感覚。英語訳してくれた人々。出会った出版社の方々。動画にしてくれた旦那。その動画ソフトを作った人々、SNS。。。
とてつもない人々の存在と、とてつもない多くの心が作り上げてくれた一つの世界観。。。
私は一人ではないし、一人で作り上げたのでもない。
壮大な世界の一片を垣間見たような、そんな大事な体験をさせてもらいました。
ありがとうございます。
そしてシーガン先生、ありがとう。
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