2010年12月2日木曜日

高尾山異常




「もう、頂上なんか足の踏み場もないのよ!そこですわっておにぎりなんて食べられないんだから!」
これが今の高尾山の現状らしい。狭い頂上は人でごった返し、砂埃がすごいとの事。ハイキングコースになっている道は、人をかき分けかき分け進むのだそうだ。
「銀座より人が多いわよ。まったくもう。これじゃ山見にいってんだか、人見に行ってんだかわかんない」
山から下りて来たばかりの70すぎのおばちゃんは怒る。何でも高尾山に登り始めてかれこれ37年だそうな。ミシュランだか、ミッテランだかにお星さまをいただいてから一気にふえたそうだ。ほんでもって最近は山ガールなどのおっしゃれ〜な民族も乗り出し、すごいことになっている。

おばちゃんいわく、毎日平均3、4万人来ている(!)らしい。
そ、それって「年間250万人という世界一の利用者の高尾山」の記録を軽く超えてくれるではないか!計算機が手元にないが、軽く見積もっても年間1000万人?!
ホントの数字は知らないが、そんなふうに思えるほどの状況なのだろう。

長野は戸隠の近くのプチホテルの方から時々「戸隠だより」をいただく。そこにも最近うんざりするほど人がいると書いてある。そっちは「聖地巡りもの」らしい。戸隠は霊験あらたかな修験僧の山だ。ご利益目指してやってくるのだ。
そこまで霊験あらたかかどーかは知らんが、高尾山もいちおー、てっぺんにお寺がある。これまた修験僧の山だ。でもよく見ると、ありとあらゆる神様仏さまがまつってあって、節操がないと言うか、哲学がないと言うか、神様仏さま、ご利益ありゃ何でもござ入れ的な品のなさがある。おもわず、あのごちゃごちゃの神様軍団の中に、どこかにキリスト教もイスラム教の神様もまつってあんじゃないか?と勘ぐらせてくれる。そこがまたやまんば的には大好きなノリなんである。人間のえぐさ、欲深さは底知れないものがある。それをここまで見事に表に現してくれた高尾山にあっぱれ!なのだ。

高尾山歴37年のおばちゃんは、人に会いたくないから、朝7時に高尾山に登るんだそうな。いつものふじだな珈琲で、私とあったのが10時半頃。すでに山頂から降りて来ていた。
それでもおばちゃんは登る。なぜか。それは薬王院さんからもらう健康手帳にスタンプを押してもらうためだ。この手帳一冊600円、証印一回100円。21ページで満行となると、御護摩受付所の外壁に、自分の名前のお札が張り出される。その枚数が多くなればなるほど、お札は大きくなり、重要人物の名前の近くの高いところに張り出されていくのだそう。おばちゃんは、なん十冊ももっているそうだ。
でも「ダレソレさんはそんなに高尾山に来ていないのにあんな高いところにお札が貼られている!きっとズルしているのね」とおばちゃんはいう。中には一人5冊分もって来てスタンプを押してもらう人もいるそうだ。まあ、ちゃんと100円づつ払っているのだから、お寺側としてはへーきなんだろう。それで位が上がっていくのだから、寺側も登山客側もどっちもどっちの欲かき仲間だわな。

それにしてもうまい事考えつくなあ。「健康手帳」と銘打って、お山に来させる。おばちゃんの世代は「健康」という言葉に弱い。そしてお山に登れば登るほど、お札の位置が上がっていく。一冊満行するたびに2700円使っているのだ。あのお札の山を見ると、いかに人がそれを利用しているかがわかる。いやはや、すごい。丸儲けだあ。

今まで日本名山を90カ所めぐったおばちゃん。年がいってからは、せめて高尾山に登って身体をキープしなければ、死んでしまうくらいにおもっている。ほとんど強迫観念だ。別に人をかき分けてまでして高尾山に登らなくてもいいだろう。まわりにゃ、山ほど山がある。そっちをゆったりのんびり登りゃいいだけだ。

「高尾山は、私の山なのに。。。。」
と、おばちゃんは言った。
高尾のお山はそんな人々をかわいいやつよのお、とほほえましく見ておられるのだろうな。

ちなみに、近所のおねえさんに言わせると、
「人?そんなのコース変えりゃ、ぜーんぜん会わないよお〜」
とのこと。
視点を変えりゃ、とたんにこの世は違って見えてくるのだ。


絵:オリジナル絵本より

4 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

ルートによっては熊くらいしかあわないかもしれませんね。
ただ山頂は・・・。しょぼすぎですよね・・・。

つくし さんのコメント...

熊!
あっちゃったらたいへんだ〜。死んだフリ。死んだフリ。

山頂はサル軍団!高尾山は動物の宝庫だあ〜。

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

お腹に抱きつくと、クマは手を出せないそうですよ。ほんとかどうかは試したくないけれど・・。
その本には、そこからどうやって逃げるかについては書いてなかったな・・・困ったね。

つくし さんのコメント...

そのままくっついて、熊と一緒に寝起きをともにする。