2020年8月20日木曜日

旅先の朝のような

 


朝、目を覚ますと、庭に朝日が差し込んでいた。


窓を開けてまだ赤いお日様を眺める。この時間の太陽は目に痛くない。

全身に朝日を浴びる。


川の音、鈴虫の声、鳥の声。。

いつもの日常なのになんだか違う感覚。なんだろう?

ああ、そうだ。旅先の朝の感じ。

知らない土地で迎えた朝の、なんとも言えない清々しい気持ち。


いつもの庭なのに。

何かが違う、この感じは何?


あ、過去が消えている。。。



私というものが背負ったあらゆるアイデンティティ、名前、性別、年齢、住んでいる場所、肩書き、考え、癖、日頃の想い、そして体の記憶までが、すっぽり抜けて、ただここにいる。


旅先の朝の、清々しいけれどなんとも心もとないこの感じは、

「ここはどこ?私は誰?」

といういつもの私が消えた時の、心もとなさなのだったのか。

それと同時に、すべての日常のいざこざをすっかり置いてきた軽さ。

それが心地よくもあり、心もとなさであり。。。



一瞬、体の痛みを感じて、日常に引き戻された。恐れが私の中に入り込んだ。

アイデンティティがどっと押し寄せてくる。

過去は恐れを伴っているのだ。


私はそっと恐れを赦した。





今パソコンに向かってこれを書いている私に、過去は戻ってきている。

名前、アイデンティティ、いつもの思い。。。

それでもさっきまでの朝の感覚は忘れていない。


過去を忘れた私のあの軽さ。ただそこにあるだけのもの。

朝の空気と、光の感じと、それを味わっている何か。



「私」は過去でできている。

過去の寄せ集めが私だ。


過去が消えたら、それはこの私ではなく、とても軽い何か。


とても平和で、静かな喜びがあり、自由だ。









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