「草がすごいんでい。くっそおお~、あったまにくる!」
近所の農家の兄ちゃんが、草刈り機の手を止めて、やまんばに怒りをぶつける。
「ったく、草ばっかりでっかくなりやがってよお。野菜なんかこれっぽっちも育ちやしねえ。ジャガイモなんか半分でえ。おまけに土の中で腐り始めるしよお」
今年はジャガイモがダメなんだろうか。妖怪んちのも半分よりちょっと多いぐらいと言っていた。
やまんばの畑と言えば、ジャガイモ?そんなもん、畑に植えたっけ?ってなぐらい壊滅状態。一個の種芋につき、一個とれればいい方だ。6mぐらいの畝をぜーんぶさくっても、バケツに3分の1ぐらいしかない。それもちっこいちっこいまめつぶみたいなやつばかり。買って食った方が全然お得だったあー!
他の野菜も同様のようだ。
「盆にウチのキュウリが間に合わなかった」
となげく。ここいらの盆は7月。本家の跡取り息子でもある兄ちゃんは、ご先祖さまを迎え入れる迎え火をたく。そのとき、キュウリの馬とナスの牛を盆棚に置くのだが、それが間に合わなかったらしい。スーパーで買ってきたんだろうか。本家としてのつとめが果たせなかったようだ。
キュウリばかりじゃない。オクラもピーマンもみんな背が低い。なりもちっこいのだという。なんだ。うちとおんなじじゃねえか。いや。やまんばんちほどひどくはないとおもうが。
ウチのオクラは背丈30センチ(笑)。
なのに、ちっこい花を咲かせて、ちっこいオクラの実をつけて頑張っている。ピーマンもこれまた背丈30センチ。だけど、彼らもまた、ちっこい身体に一所懸命、たわわに実をつけてくれている。
一人元気なのがトマト。重そうにぶんぶん実をつけて、どんどん真っ赤になってくる。
「太陽が元気がねえんだ。だから野菜が育たねえ」
兄ちゃんはその原因を太陽の活動に求める。
「こんなに暑いのに?」
「いんや。ほんとは元気がねえんだ。太陽の黒点が全くねえ。今は氷河期に向かってるんでい」
最近、地球が様子が違う。あきらかに今までと違う。何かが起こっているようだ。近所の草取り名人のじっちゃんまでもが、今年の草の勢いにはすっかりまいっちまっているそうだ。
まあ、かといって、やまんばのちっこい野菜を、地球さんのせいにするのはなんなんだがね。
とりあえず、やまんばの野菜のちっこいのんは横においておいても、野生の草が旺盛に育っていて、野菜が育たない、と言うのは、何か意味するものがあるんではないだろうか。
近所の化学肥料と有機のセットで育てている畑の野菜たちにその傾向はみあたらない。相変わらずどんどんでかくなっている。
本家の兄ちゃんの所は、一切化学肥料を使っていない。やまんばの所も、もちろんその有機肥料さえも使っていない。だからなおさらその自然の変化をまのあたりにするのかもしれない。
草は原始の姿をその中にとどめているが、野菜は長い間の人間の智慧が入って作られた、いわば人工的なものだ。その彼らが、それぞれ力をつけはじめたり、小さくなっていったりするのには、なにかわけがありそうだ。
この地球上で何か変化が起こっているとするならば、植物の中に変化が起こっても不思議ではない。なんかしらのリセットがおこなわれているのかもしれん。
野菜育てている皆さんはどうですか?
なんか今年に限ってのかわった変化は見当たりますか?
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