2010年10月5日火曜日

阿寒湖の虹




重大な任務により、北海道は阿寒湖のほとりにいってきましたです。なにぶん、隠密なので、その目的にかんしては、しみつ(秘密)であります。ですが、生まれて初めておりたった北海道の地、空気、緑、風、雨、光、そして虹までも味わわせていただきました。しかしそれにもまして、言葉で言い表せないほどの人の温かさとおおらかさを満喫。もう腹一杯でございます。阿寒の皆様、ほんとうにごちそうさまでした。


女満別空港に降り立ったのが、3時前。友人のお母さんの車をお借りして、網走に入り、オホーツク海に向かう。わたしゃ、高知県の海しか知らない。あったかい太平洋の波しか知らない。ぜひ北の海をみてみたいと思ったのであった。途中、サンゴ草という真っ赤な草を見に行く。ここら辺にしか生えない貴重な草。湖畔の湿地帯に群生していた。しかし今年の暑さで思うように赤くなっていないもよう。その湖を回るように、車で海に向かう。湖のわきを抜けた瞬間、ごお~、どど~ん、という地の底から溢れてくる音とともに目の前に海が広がった。すごい。車を道路のわきに止めて、海を体感する。これぞ地球のエネルギー。よせてはかえす地球の呼吸。溢れる潮のにおい。地を揺るがす波。水平線の向こうからやってくる異国の潮。ここに流氷が流れ着くのかあ。

基本的に私は海には興味がない。湘南の海も、フロリダの海も興味がない。
「海がみたいの。ドライブしましょ」なんてそこらのおねーちゃんがいうようなセリフははかない。そんなもんはわたしにとっちゃ、海じゃない。しかし今回は
「海がみたいぜよ。ドライブするぜよ」
生まれて初めてはいたセリフだった(注:こんな高知弁はないちや)。
高知の海とはまるでちがう。おそろしー強さとさびしさときびしさと、なんだかわけのわからない感情がおしよせてくる。頭で理解しきれない感覚をただ立ち尽くして全身で味わっていた。

阿寒湖のほとりに降り立ったのは、夜。アイヌコタンは、しっとりとぬれておりました。初めて見る「アイヌの村」という名の街。入り口には巨大な木彫りのミミズクが、羽を広げて訪れるよそ者を見定めるような、威嚇するような、それでいておおらかに、見下ろすようなカタチで私を迎え入れてくれました。おとぎの国に入り込んだような不思議な感覚。ディズニーワールドを100分の一にギュ~っと凝縮したような、ちょっとめまいがしそーな現実の世界ではないような感覚になる。

入り口にミミズクが鎮座ましましている。これはまさに鳥居だ。その鳥居をくぐると、奥に向かってぐっと急激な坂道になっている。坂道の両脇にはお土産物や食堂がずらっと並んでいる。そして一番奥には建物が。その建物で、アイヌの伝統古式舞踊が粛々ととりおこなわれるのだ。
これはまさにひとつの神社の形ではないか!神社フェチだった私は、一人勝手に妄想してくらくらした。ミミズクの鳥居をくぐって参道の両脇に出店。その一番奥は社。その社でお神楽が舞い踊り、神に捧げられるのだ。
いや、アイヌ人を倭人に見立てているんじゃない。そもそも神社の形そのものが何かの真理をついた姿なのかもしれない。それを倭人が神社という形にし、アイヌ人はそれをコタンと呼ぶ。
コタンは他の阿寒湖町の道とは少し方向が違う。変だなと思いながら地図を見ると、コタンはちゃんと東西に向いていた。

そのコタンの一角で、アイヌ人と倭人がひそひそとしみつの会議を開いた。(しみつだから状況ははしょるのである)
ホテルに戻ると、夜中の3時を回っていた。やまんばはだれひとりいない湯船にぽちゃんとひたる。なんとゆうすべらかな温泉なのだ。身も心もとろけそーになりながら、そのままそこに寝るわけにもいかず、意志力で部屋にもどり、ふとんにもぐりこんだ。
翌朝、窓を開けると目の前に虹が広がっていた。阿寒湖を渡る虹の橋。ありえない。絵に描いたようだ。いや、まちがってもこんな絵は、恥ずかしくて描けない。そんな風景をもらった。

その日は一日中だあだあぶりの雨と、横殴り(?)の風。台風かあ〜?阿寒湖はマッチロ。なんにもみえない。しかし霧に浮かぶ美しい島を見つける。しばし美しさにひたる。
その夜もしみつの会議が粛々と無事とりおこなわれる。ああなんという美しいコタンの人々よ。こんな濃厚な時間をもらってしまっていいのだろうか。「いやいや、ほんとうにすみません〜」恐縮しながらもしっかりと、すべてを味わわせていただくどん欲なやまんばであった。

出発の朝はドン晴れ。
そーとー日頃の行いが悪いと見える。コタンの人々に見送られ、後ろ髪を引かれながら、コタンを去る。釧路空港から見えたのは、雌阿寒岳だったのだろうか。手を振ってくれているように見えたのは気のせいか。
みんなの顔がその山にかさなった。


絵:この絵を見て、アイヌの歌い手床絵美さんが「摩周湖みたい」と言ってくれた。摩周湖は阿寒湖の近くにある。

4 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

時折すごい風景ってありますよね。
私は、虹が自分の上を通過してゆく場面。
あとは、太陽の周りを取り巻くまん丸の虹。
自分の左は晴れてるのに右側は雨が降ってる。とか。
偶然と言うにはあまりに、できすぎな瞬間。
松本より

つくし さんのコメント...

今、松本にいるの?

そりゃ、すごい風景を見て来ましたねえ〜。
いいなあ〜。プレゼントかな。
虹が上を通過する瞬間ってどんなだろう?

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

通過するときはただの雨です・・・。
虹色の雨だったら凄いけどね!!

つくし さんのコメント...

え〜、虹の下って雨なの?
おバカな質問?