「ティファニーで朝食を」という映画のタイトルを聞いて、そういう名前のレストランかなにかがあるんだと思っていた。
それが高級な宝石店だと知ったのは、日本の友人から「一万円くらいで指輪買ってきてよ」と頼まれたときである。確か映画は昔見たはずだったのに、私は何を見ていたんだろ?
NYの五番街にあるティファニーで、その頼まれ事がどんなに無茶な事だったのか思い知らされた。そんな安い値段の代物なんか、どこにもなかった。店内はいかにもお金持ちそうな人たちがゆったりと歩いている。田舎もんの私がうろうろと物色するにも限界がある。正直言って香水の匂いがぷんぷんする店員さんに聞くのも抵抗がある。しかし背に腹は代えられない。大事な友人の頼みだ。
「いっ...一万円...くらいで指輪ありますう...?」
一瞬、けげんな顔をした超美人のお姉さん。
「は?一万円ですか?」「はい...」
しばらくあれやこれやと考えたあげく、「ちょっとお値段越えますが、これがあります」と、無造作に出されたのは、へびの形をした指輪だった。一瞬「あいつにへび?イメージ違うなあ...」と思ったが、この小憎らしい頼み事しやがったあいつには似合っているかもしれんと思い、即決。「こっ...これください!」
あれから数年たって、ティファニーに勤めていた知人から聞いた。
「最近、一万円台の宝石類をティファニーが作ったのよ。あんまり日本人観光客がその値段でほしがるものだから」
「....!」
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