あるところにオーナーさんがいました。
オーナーさんはある時いいことを思いつきました。
お化け屋敷を作ったのです。
ところがオーナーさんは、自分がお化け屋敷を作ったことを覚えていません。
お化け屋敷の中で、毎日毎日、「怖い怖い」と言い続けています。
お化け屋敷の中に、どんな怖いものを仕込んであるかも覚えていません。だから隣の部屋にどんな魔物が潜んでいるかと、おっかなびっくり住んでいます。
そしてとても怖いものを仕込んでいます。それはテレビです。
テレビをつけると、毎日恐ろしい話が流れてきます。連続殺人犯がまだ捕まっていない話、未知のウイルスが世界を凌駕していく話、子が親を虐待する話。。。
オーナーさんは、それを見ては震え上がり、外に出るのも警戒します。あの電柱の後ろには、まだ捕まっていない犯人が隠れ潜んでいて、今にも襲ってくるかもしれない。人とすれ違ったら、何をうつされるかわかったものじゃない。。。。
自分で作ったものに、自分で怯えているのです。
どうにかしてその恐怖から逃れるために、あの手この手を使って対処しようとします。
でもなぜオーナーさんは、自分で作ったのに忘れているのでしょう?
それは、覚えていては楽しくないからです。
この部屋にこの魔物が仕込んであって、どのように現れてくるのかを覚えていたら、ちっとも怖がれないのです。
臨場感がないって言うんでしょうか。ドキドキ感がないって言うんでしょうか。
それを味わうために作ったのに、それが味わえないなんて、作った意味がありません。
だからオーナーさんは、あえて忘れることにしたのです。
でももう何年も、何十年も、何百年も繰り返しています。
いつになったら、自分が作ったお化け屋敷のことを思い出すのでしょうか。
それはたぶん、
もう飽きました。
恐怖を楽しんだところで、何の意味もありませんでした。
だってそれによって私はちっとも幸せになんかなれなかったんだもん。
だってそれによって私はちっとも幸せになんかなれなかったんだもん。
と、気付いた時なのでしょう。
ところでそのオーナーさんって?
白状します。
私のことです(苦笑)。
ところでそのオーナーさんって?
白状します。
私のことです(苦笑)。
絵:「Murder Comes to Call」ミステリー表紙イラスト
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