2011年8月13日土曜日

息子はママの期待に応える




ある日、息子が「ママ、地震の夢見たよ」という。
すると「まあ、なあに坊や、どんな夢?」
「うんとね。大きく揺れたあと、海からいっぱい水がやって来て、ビルとか流されちゃうの」
「まあ、すごい!それでそれはいつおこるの?」
「さあ、知らない」
「そんな事言わないで、見たものをちゃんと言いなさい。テレビでなんか言ってなかった?」
「う。。。ん。。と。あ、テレビでお姉さんがなんか言ってた。」
「そっ、それはなに?」
「え。。と。。」
「東京とか大阪とかなんか場所、言ってなかった?」
「あ、東京は、こわれたから、大阪でやってますって」
「え~~~ッ!いつなの!?いつ!?新聞見なかった?」
「新聞?あ、、、みた」
「何日って書いてあった?」
「8月の、、、、1のあとの文字が読めない」
「も一回寝て聞いて来なさい!」

勝手に妄想するある親子の会話。
その後その日にちをお母さんは息子から聞き出し、ブログに書いた。
その後、そのブログは閉ざされた。

彼女は彼の夢に期待をした。きっとこれは神様からのメッセージだ。そして私はそれをお伝えするお役目があるのだと。そのときから息子はママと一緒に過ごす時間がふえた。ママは聞く。「ねえ、神様はなんて言ってたの?」息子は答える。ママと一緒にいる時間がうれしい。ママに期待されている自分がいる。ママの期待に応えなきゃと思う。そうやってママの期待に応えているかわいい坊やがいる。

最初に見た夢は、予言なのか、東北大震災を見た事を語ったのか、どっかで見た映画のシーンかもしれない。だがその後、ママの期待が入る事によって、どんどん歪んだものになっていく。
ママはメッセンジャーとしてのお役目があるのだと思い込む。ブログでそれを披露する。大きな反響を呼ぶ。共感者があふれる。ママは有頂天になる。それはいつ?どこでおこるの?どうやったら逃げられる?ママはコメンターからの質問を神様に聞いてくれるように息子に頼む。それに答える神様。


そんなものがもしこの世にいたら、人生はもっと楽に違いない。聞けば答えてくれる神様。地震がいつどこでやってくる。どこに逃げたらいい。どうすればいい。次どうすればいい?仕事は何をすればいい?どこに住めばいい?
そんな便利なものがあったら、自分で考える事を放棄するにちがいない。困ったら神様に聞けばいいのだもの。



みんなどこかでそんな存在がいるほうがうれしい。そのお告げを伝えてくれるブログがあったらラッキー。お金はかからんし、覗き見するだけでいいし、自分の家族だけどこかに逃げて助かっちゃえばいい。するとみんな同じ場所に逃げ込んでて、
「あ~、あんたあのブログ、見たわね」となる(笑)。(やまんば、おめえも見てるだろ)


ママは怖くなったのだろう。もしその「予言」があたらなかったらどーしよー。息子の言っている事が違っていたらどーしよー。
きっとコメントに誹謗中傷もよせられていたのだろう。
「あんた、違ってたらどーなるかわかってんの」
予言された日より前にそのブログは閉ざされた。そして予言の日は過ぎた。。。


今頃彼女はどうしているのだろう。それが心配される。真面目そうな性格だから、相当落ち込んでいるに違いない。自分の身分は誰にも見つかってはいない。しかし自責の念に押しつぶされそうになっているはずだ。

今の彼女の気持ちは、どっちかになっているのだろう。
一つはその神様からのお告げは今も続いていて、
「あれは、こうこうしかじかで、地震は免れたのです。。」
というお答えをもらって、ほっとしている。
それか、息子を信じなくなる。。。

どっちにしたって、自分を正当化するために彼女の心は必死で動いているはずだ。
気の毒なのは息子さん。ママのためを思って一生懸命「お告げ」を「聞いた」のだ。それを「あんたがへんなこといいはじめるから。。。」
と言われたり思われたら、なんてかわいそうなのだ。
だが、それで
「アタシってばか。なんでこんなもんに引っ張り回されたんだろ」
って、「お告げ」から冷めてくれたらまだいい方だ。問題は、最初のほう。

その後も神様からのお告げを聞き続け、いや、神様からの「いいわけ」を聞き続け、ああしろ、こうしろと振り回され続ける事だ。。。
心のどこかで当たらなかった予言に不信感を抱く。その苦しさから逃れるように、自分への正当化が頭をもたげる。
「いーや!、この神様が言う事は本当なのだ!」
とムリヤリその中に没頭する事の方が危険だ。
そのうち、まわりもおかしな事になって来たと気がつく。
「ママ、それおかしいよ。。」
「パパ!なんてこと言うの。これは神様からのメッセージなのよ!」
こうして現実とかけ離れた世界の中に没頭していくことになる。そして日常生活はおくれなくなる。。。


じつはそういう存在は、いないんではないだろうか。
彼女の意識していない深いところにある思いが、「神様」を作り上げたのではないだろうか。息子さんはそんなママの思いに答えたかっただけだ。スピリチュアル系の人は、それを「悪いヤツが入った」と言う。そうではないと思う。ママの個人的な思い、鬱屈した思い、いろんなストレス、心の奥深くにたまっているネガティブなおもいが、「神様」という存在を作って、救いを作ったのだ。それは何よりも彼女自身が救われたかったからではないだろうか。このメッセージをみんなに伝えてみんなを救いたいとおもう。それはそうする事で、彼女自身が救われるからだ。
このやまんばだって、へなちょこな野菜をもってぱぱさんちにもっていくのがうれしい。それは何より喜ばれたいからだ。みんな人に喜ばれて幸せを感じるのだ。

その眼に見えない存在からの、地震の予言以外のメッセージは、感謝しなさいとか、やさしい心になりなさいだ。そんなものはそこらの霊能者さんはみんな言っている。霊能者さんだけでなく、お坊さんも、牧師さんも、先生も、幼稚園の園長先生も、おばあちゃんも、おかあさんもみ〜んな言ってくれる言葉だ。
それを宇宙人や、死んだ人や、神様からもらったといってありがたがる必要はない。だからママさんもその「神様」にすがりつく必要もないし、それを見る読者もありがたがる必要もないのだ。

その神様の言葉は、そのままママが願っている言葉なのだ。感謝したり、やさしくみんなを思う気持ち。それを自分自身に向かっていっている。それが今回こんな形で現れたに過ぎない。
そんなママを
「しかたねえなあ〜。ま、わたしでも同じ事になったら、そうなるわな」
と、彼女を非難する事なく、自分の事のように受け取って欲しい。


今は、極端に心が走る時代になって来ている。今の今まで味方だと思っていた人が、何かの拍子にいきなり敵に変容する。人々の心が不安定になって来ている。だからこそ自身の心を淡々と見る必要がある。
ある日、突然自分にメッセージがおりて来た!と言う現象が簡単に起るかもしれない。
しかしそれは外からのものではない事に気づいて欲しい。鵜呑みにしないで欲しい。これは自分のどこかにそれを望んでいたからこういう形で現れているのではないのか?と、自分自身を観察して欲しい。

ママと息子さんの出来事は、今の日本をよく表してる出来事だったとおもうなあ。。。



絵:「バンドネオンの豹」表紙イラスト

2 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

だっておもろいもん!信じたくなるでしょう??人情ですよ。で、外れたらm(__)m
てなもんでしょ?
占いなんてそんなもんです・・。
「あんた、異性関係で悩んじょるね?」
って聞かれて、当たってない!って思える人どんだけいます??

つくし さんのコメント...

「おもしろいもん!」
って、それだけで終わらせてくれる人だったらいいんです。

中には恨む人やそれを言った人を軽蔑する人もいるからね。それで傷ついちゃう人がいっぱいいるわけなのだ。

占いを職業にしている人なら、誹謗中傷は慣れっこになっているだろうけど、一般の人がその矢面に立たされると、その傷つき方はすごいんだろうなと思ったわけです。。。