2011年4月26日火曜日
オンステージ!
彼はにやっと笑ってこう言った。
「よし、ステージに草はやかそう」
「は?」
私とダンナは口をあんぐりとあけた。
それから舞台美術家の頭の中に、つぎつぎとイメージが膨らんでいった。
「まわりを全部黒布で覆ってね、真ん中に一坪分の草原を出現させるんだ。その上に、アーティストが裸足で立つ。どうよ!」
彼の名は江頭良年。彼が手がけたダンスステージは数知れず。その道何十年の大ベテランの有名な舞台美術家に、あろう事かわしら夫婦は相談を持ちかけてしまった。
さあたいへん。やまんばはそのときから草担当になってしまった。
頭ばっかりが先行して遅々として進まぬ私の行動に業を煮やして、ベテラン自らが率先して舞台を作ってくれた。畑に1坪分のコンパネを広げ、その中に次々と草を入れていく。草なら任せておいてくれ。畑になんぼでもはえちょる。二人で汗をかきかきスコップで草をひっぺがしては入れる。1時間あまりで完成。やった!簡単じゃん!。。。と、おもった。
次の日。やまんば、意気揚々と畑に行く。
枯れてるじゃん。
見事に全部しおれていた。すでに枯れている草あり。草って強いんじゃなかったっけ?
それから水をかけまくる。次の日にチェック。元気なし。山のように水かける。また次の日チェック。ついに枯れ切ってしまう。
。。。どーすりゃいーのだ?
それから奮闘の日々が続く。
雑草のように強く生きる、なんて言葉があったが、雑草はほんとはデリケートなのだ。環境が変わると、
「え~~~~っ、聞いてなーい!」と、へそをまげる。
しかし雑草にもいろんな種類がある。やまんばは、畑の中に草たちの特徴をじーっと眺めた。あ、これいけるかも、と思うものたちをスコップで土ごとひっべがしては、バケツにはった水に根っこをジャボンと浸し、しめらせてからコンパネに置いてみるという実験をしてみた。すると生きているもの、しおれていくもの、しばらくすると機嫌が直るもの、などがあるのを知る。それで次第に数ある草たちの中から、いかせるものが選択された。
それから敷き詰めながら、裸足で上がれるように、手で、素足で押さえながら、感触をチェックをする。裏は杉山。草の中には枯れたギザギザの葉っぱやとげとげの種たちがまぎれている。とげとげのスギの葉っぱを歌っている最中にふんずけたら、えらいこっちゃ。
大小さまざまな草がぎっしり詰められ、美しい姿になった。やまんばはひとりほくそ笑む。我ながら美しいぜ。。。
そして当日朝、車に積み込む。。。。のはずだった。
「重い!」
なんと、最初の枯れたトラウマで、土と水がおもいっきり入れられていて、コンパネはとんでもない重さになっていた。
「こんなに入れて、バカじゃねえか!?」
ああ、せっかく美しくレイアウトされていた草たち。。次々とひっぺがされてビニール袋に詰め込まれる。ぶーぶー文句を言われて泥土でくちゃくちゃになった草たちをなくなく運ぶやまんばであった。それにしても相変わらず、アホなやまんばであった。。。
さて気を取り直して、本番のステージ作り。
何日も係わっていた草たち。レイアウトは頭に入っていた。ばんばん詰め込む。草のステージはあっという間に出来上がっていた。舞台美術家江頭さんが、草に特殊な色のシートでスポットライトを当てた。ばっと緑が広がる。
高尾の草たちはその瞬間、スターになった。
そしてオンステージ。
私は受付で外からガラス越しにコンサートの様子を見ていた。音はそんなに聞こえなかったが、なんだかとっても華やいで見えた。床絵美さんもSANPEさんもとっても楽しそうだった。
コンサートが終わって、出て来るみんなの顔が嬉しそうに見えた。
「楽しかった~」といってくれる。ああ、やってよかったなあ。
ステージをたたんでいると、草をお持ち帰りする人が続出。高尾の草は都会の人々にもらわれていった。
出演者、オオイヌノフグリ、ギシギシ、ヨゴレハナネコノメ、ニリンソウ、ヘビイチゴ、カヤ、ヒメジオン、クローバー、フキ、ヨモギ、ホトケノザ、ナズナ、クサイチゴ、カキオドシ、その他、名が分らない草たち。貴方たちのおかげで、とっても素晴らしい時間を頂きました。ご出演ありがとう。そしてお疲れさまでした。
そしてそして、みなさま、お忙しい中、この度のジョイントコンサートにお越し下さいまして、まことにありがとうございました。
絵:「けんぽ」表紙/アフリカの草原
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4 件のコメント:
会場に入って、目の前にある小さな原っぱの舞台、
音楽が始まる前から、世界が変わりました。
そういえば小さな虫さんも登場しましたね。
SANPEさんの足にチョロチョロと。
出演者多数、楽しい舞台でした。
泉美さま、コンサートお越し下さいまして、ありがとうございました。
あは。虫さんもご出演、バレましたか。失礼いたしました。
もっとブ〜んと飛び交うかと思いましたが、どうも様子が違うぞと、じーっとおとなしくしていたようですね。(ほんと?)その後畑に返されて、ホッとしていたようでした。
そうでしたか・・お手伝いもできず、
見にも行けず失礼いたしました。orz
いえいえ、お気になさりませぬよう。
そのぶん、のんべにいきます。
そろそろ畑の草刈りだよ〜ん。そっちはよろしく。
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