若い頃に見たドラマのワンシーンが、
ずーっと私の脳裏にくっついて離れない。
あれは一体なんだったんだろう?
そう思ってその謎をずっと追いかけることになった。
ある男女が広大な砂漠の中を歩いている。
どっちに向かったらいいのか、いつオアシスにたどり着くのかわからない。
そんな中、男はペットボトルにあった残り少ない水を頭から全部かけて、
「あ~気持ちいい~」と言った。
それを見た女の方が、
「あんた!なにやってんのよ!もう飲み水ないじゃないの!」
と、ものすごい剣幕で起こる。
男はキョトンとする。
そのボケた男優は渡部篤郎。女優は覚えてない。
もし私がその状況に置かれたなら、ブチ切れるだろう。
ふざけんなよ、このやろう!
飲み水なくってどーやって生きていくんだよ!死ね!とか言っちゃう。
いわゆる後先考えないヤツであり、
常識でいったら「おバカ」であるのに、
その行為になぜか惹かれる。
コースの言葉の中に「癒された心は計画を立てない」というのがある。
彼はまさに計画を立てていない。
これから水なしで砂漠を何日歩くかわからない、
マジで死ぬかもしれないという心配がない。
一方、私の考えは、これだけしかない水で、
どうやって生き延びようか必死で考える。
でもなんか辛い。
自分がなんか弱っちい、ちっこいものに思える。
後先ばっかり考えて、せせこましくビクビク生きるものに思えてくる。
ギュ~って、ちっこく縮こまった、や~な感じがする。
いや、ここだけの話。
そもそも60数年間、後先考えて計画立てて、
計画通りになった試しがない(笑)。
でも彼は違う。
水?そんなもんないと生きていけないの?
そんな限られた存在なの、僕たち?
という、なんというか全託。
全然大丈夫。オッケー。みたいな感がある。
そこに惹かれるのだ。
自分というものが、身長158センチぐらいのちっこい檻の中に入ったものではなく、
輪郭で区切られていない、外と内の境界線がない、何か。
果てしなく広がる何か。
まわりの砂漠も空も全部包み込んだ何か。
そこに心が向けられている。
そしてそのことさえも気にもしてない。
彼は喜びの中にいる。陽気な中にいる。
今を楽しんでいる。
そこには恐れのかけらもない。
本当のわたしたちはこうなのではないか?
真の自己は、水が、体が、どうなるこうなるという考えを持った存在ではなく、
果てしなく広がるもの。
それは喜びと平安とまったき静けさがある。
これは本当のことなんじゃね?
めちゃ自由なんじゃね?私ら。
絵:「coopけんぽ」表紙イラスト
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