2009年1月13日火曜日
おんぼろ小屋にりっぱなドア
かしいで、竹が中まで占領していたおんぼろ小屋に、棟梁が手を入れた。宮大工の本領発揮。
柱4本分の足元はアリに食われ、屋根の上からぶらさがっていた。いつ崩れてもおかしくないような状況だった。それを取り除き、近所の川から大きな平たい石を持って来て土台にし、新しい柱を入れて、小屋はまっすぐに立った。
そこに棟梁がどこから持って来たのか、すごい立派なドアをはめ込む。
「こりゃあ、80万円もするりっぱなやつだぞ」と自慢げ。
今日は柱とドアをつけた。壁はみんなとりのぞかれている。ドアだけがえらい立派に輝いていた。
「なんだか、バーのドアみたいだなあ」と友達。
「ドアの前になんか看板つけたくなるねえ」と私。
「うん。『バー・棟梁』ってえのはどうだ?」と友達。
「誰も入りたくねえ〜っ」と、みんなで爆笑。
とにかく何でもかんでも拾ってくる。そこらにころがっているものを使う。
イノシシよけの柵の杭は、ウラの杉林で倒れていた杉やヒノキの芯の部分を使う。
まわりは腐って朽ち果てているが、木の芯に当たる部分はまったく腐っていない。その部分だけを残してあとはとりのぞいて、棒の一方を尖らせ杭にする。
「こうすりゃ、百年は腐らないぞ」だそうだ。私たちが死んで畑はなくなっても、このくいだけはのこっているということか。
そこへ近所の竹林から竹を切らせてもらってまわりを囲った。間に入れる金網はさすがに新品を買ってきた。あっという間にりっぱな柵が出来た。
畑の入り口への道は、最初は歩ける幅などないほど狭かった。下は崖になっていて、歩くとおっかない。そこにそこらにあった鉄パイプを杭の代わりにして、谷に打ち付け、朽ちていた杉を寝かせ、その上に砂利や土を入れた。去年の夏の豪雨で流れて来たたがれきを拾って来て、道いっぱいに敷き詰める。平らな所を上にしてていねいにがれきで埋めていく。そこにこれまた川にあった砂利を運んで来て上に乗せる。1メートル幅のりっぱな道が出来上がった。
棟梁の小屋を作ったり、畑を作ったり、道を作ったりしているのを横で手伝っていると、昔の人はなるだけそこらへんのものですべてを使ってなんでも作っていたんだなあと実感させてくれる。その行為は「リサイクル」というような、なまっちょろい言葉では言い表せない完全な説得力を持つ。
私はそれを横で見ながら、一体何を学ばされているんだろうか。
そこううするうちにおんぼろ小屋はどんどん変貌を遂げている。中まで占領していた竹は根っこから掘り起こされ、そこにほったらかしにされたいたサッシは取り付けられていく。屋根のとたんはさびでぼろぼろだが、壁やドアは立派。そのちぐはぐさが何とも言えない味を持って来た。
今まさに「チェインジング」している。
絵:『T&R』掲載
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