2009年5月25日月曜日

かわいい犬だった




あれからずっと雨が降っている。まるで弔い雨のようだ。おとつい身内だけで小さなお通夜があった。それ以来お山はけぶっている。まるでみんなの心が泣いているかのように。


一週間前、犬のグインが突然いなくなった。さっきまで畑の中で遊んでいたはずだった。ふと見渡すとグインがいない。捜索が始まった。「グイン〜、グーイン〜」お山にみんなの声がこだまする。それから夜になった。近所の友だちもいっしょになって探す。玄関は開け放たれて、いつでも帰って来れるようにした。でも戻ってこない。グインのオーナーさんは、インターネットで呼びかける。迷子犬の張り紙を作ってくれて、近所に貼ってくれる人もでてきた。ネット仲間は、みんな心配して情報を一気に流してくれた。こんなとき、人のやさしさが身にしみる。
でも目撃情報がまったくない。ひょっとしたら、近くにいるのかもしれない。

そしておとつい、グインは畑のすぐ下の線路わきで見つかった...。
不思議なことに、鎖の首輪が切れて飛んでいた。グインは犬という人に飼われる存在から解き放たれたかのようだった。いや、きっと自分で解き放ったに違いない。おだやかな顔だった。


私たちが畑仕事をしている間、彼はいつも山の斜面を上がったり降りたりと走り回っていた。うちのダンナが棒をなげてよく遊ばしたものだ。彼はそんな単純な事がことのほか大好きだったようだ。ゼーゼーいいながら、へろへろになっても「もっとなげて〜」とおおさわぎした。犬は笑わないと言うが、グインはいつも笑っていた。犬は笑うのだ。
そんなグインは今静かに眠っている。オーナーさんは、グインを最後までちゃんと見送った。美しい見送り方だった。彼らの愛情が横にいてひしひしとわかる。こんな家族の所にいて、グインは本当に幸せ者だったなあ〜。


私が最後にグインを感じたのは、オーナーさんのお家でのんべしたとき。足元に何かの重みを感じた。テーブルの下を見ると、グインが頭を私の足の上に乗せて寝ていた。私は足を動かさず、じっと彼の重みを感じていた。あのあったかさと、頭の重みは、今でも私の足に残っている。
うちでユタといっしょに過ごした日々を思い出す。グインはチョコレートラブラドールにしては器量よし(?)でスマートな体つきだったけど、ちょっとばかし間抜けでアホな犬だった。さんぽ中にうんこもくっちゃったりもした。ユタに手厳しく鍛えられもした。でもやっぱりいつまでも子供のまんま。あまえんぼでさびしがりや。人が振り向くと、満面の笑顔でしっぽをぱたんばたんと力強くふる。その勢いは、身体にあたって痛いくらい。いつもスイートでハッピーで、そこらに幸せをまきちらす犬。そこがたまらなくかわいかった。

ありがとうグイン。やすらかに。そして犬としてのお仕事、おつかれさまでした。

絵:coopけんぽ表紙『犬はよろこび庭かけまわり〜』

3 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

先週の土日は、雨のせいもありましたが、心の湿度が高すぎました。ようやくちょっとだけは落ち着きました。
今回の犬の件では、皆さんの優しさを改めて感じることができました。それはすでに知り合いの方だけでなく、まだ顔も知らない方々も含めてです。すべては愛犬の人徳のたまものと思っています。
高尾から自宅までの帰路は、彼との差ぽコースでもありました。歩いていると今でも、私の左側を歩いてる足跡や体温を感じます。
ご飯を食べていても、私の横にやってきて、直立不動(?)で座っている彼が見えます。
立ちあがって歩いていると「散歩ですか?」と言わんばかりに、へらへらとお愛想笑いでついてくる彼がいないのは、さみしい限りです。
たぶん女房も同じなのでしょう。我々は、このぽっかりと空いた穴が自然に埋まるのを、待つのではなく、早急に埋める。埋めなくてはならない。という結論に達しました。
彼の事は、一生忘れられないでしょうけど、このままではちょっと寒すぎます・・。
ひょっとしてもうご存知かもしれませんが、またあらためてお話しますね。
(先日もコメント書いたような気もしますが、飲みすぎでしくじったようですね。)

リス さんのコメント...

動物病院にフィラリアの検査にいって、迷い犬の張り紙を見ました。どこかで見たような犬と思っていたら、彼。きっと、山に入り込んで、そのうち、おなかすかせて帰ってくると祈っていたのですが。

つくし さんのコメント...

まいううーぱぱさま
つらいよ。ほんとにつらい。同じ思いは2年前に体験しているから、痛いほどわかります。彼との散歩道はほんとにつらいよね。その左に彼の存在を感じるのは、まちがいなくそこにいるな。ごはんのおねだりもしているな。強烈な思いは、彼をそのままそこにいさせます。そしてよろこんでいるよ。でもつらいつらいという自分の思いにとどまらないでね。だってグインは行く理由があって行ったのだもの。私たち人間にはわからない犬の世界がある。犬の理屈がある。だから逝った事を悔やまないでね。悔やむ事は人間の側の理屈なのだ。グインは哀しんではいない。ペットは自分の逝くときを知っているという...。
私たちもユタをなくして本当に苦しかった。でもそれによって、いろんな事を知った。言葉にはならないいろんな事を学んだ。だからこそ、人間の愛情はより深くなるのだと思う。たぶんペットはそんな役目をしているのだ。死に出会って、より深くなる愛情。まうううーぱぱさん家族は、今回それを手にしたのだと思う。
そして新しい家族には、グインにあげた以上の愛情を注ぐ事が出来ると思う。うんと大事にしてあげて。そして犬の心をじっと見て、理解する力を養っていってください。犬は全部わかっています。
楽しみだなあ、新しい家族!

リスサマ
ありがとう。気にしてくれて...。残念ながらこんな事になってしまいました。でもオーナーさんは不死鳥のようによみがえります!また新しい仲間にあえますよ。