今回、高知に帰って、母の心の中を観ることが出来たのは、おもしろい体験だった。
母は5年前に小脳が小さくなって行く進行性の難病を言い渡された。
それは急激に体の機能を衰えさせて行く病いだと言う。
1年後には車いすになり、2年後には、自分で筋肉も動かすことが出来なくなり、4、5年後にはいろうになると診断されていた。
5年経った現在、家の中で歩行器を使い、なんとか歩いているし、自分で料理も作るが、いろうにはなってはいない。
買い物はヘルパーさんにたのみ、週に一回リハビリに連れて行ってもらっている。
とにかく運動することがだいじ。体を出来るだけ動かすように言われている母である。
滅多に家から出ないが、自然が好きな母を、病院へいくついでに「牧野植物園」へ連れて行くことになった。
ところが、いざ家を出ようとすると、
「いや。行きとおない」
というのである。
午前中父の病院に行き、昼前にもどり、母とお昼を食べてのち出発予定だったのに、頑として動こうとしない。お化粧も終わり、着替えているにもかかわらず、ソファに座ったまま、行かないの一点張りw。
はは~ん。きたな。とおもった。
「どうして行きたくないの?」
「いややもん」
私は牧野植物園への道中がしんどいからだとおもったので、
「じゃあ、病院だけにしよか」というと、
「病院に行きとおない。牧野さんところへは行きたい」というのである。
そっち?とおもわず吹き出しそうになる。
「なんで病院行きたくないん?何か問題でも?」
「あそこの坂がいや」
母の病院の入り口に、長さは3メートルほどのほんの少し緩やかな坂がある。母はその坂を上がるのがイヤだと言う。
母はいつもシュミレーションをする。それは、今座っているソファから立ち上がる所から始まる。
立ち上がり、家の中を歩行器で移動し、靴を履いて、廊下を歩き、階段の手すりにしがみつきながら降り、タクシーを待ち、タクシーに乗り、病院に行き、タクシーを降りて、歩行器にすがりながら、病院の坂を上がる。。。。。そこで、心がつまずいた。
最悪の状況を思い描いたのだ。そこでこけたらどうしよう。。。。もしこけたらひどいことが起こる。そんなことが起こるんなら、行かんがまし。。。
「それって、ホンマに起こるんかな。こけるかどうかは今の段階じゃわからんやろ?ほんとはこけんかも知れんやん」と私。
じーーーっと考える母。しばしの沈黙。
目がロンパリになってる。口がへの字に曲がってる。意志力でなんとかしようとしている時の彼女のいつもの顔だ。
「行く。」と一言。
彼女の意志は決まったらしい(笑)。
さて、母とむすめの珍道中。これからどうなりますことやら。
続きは明日。
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