2009年4月14日火曜日

お山は笑う




お山が笑っている。

高尾山は富士山のように一つのお山ではなく、いろんな山々と尾根でつながっている。その山脈はまるで龍の背中のよう。くねくねとうねりながら、その背はどこまでも広がっている。

その山の尾根を眺められる所にたつ。目の前に広がる山並みは、巨大な着物の帯のようだ。

ズギとヒノキの深緑の織物の間に、広葉樹が織られる。冬の間には、味気ないグレーな色をしていた広葉樹たちは今、刻々と変化を始めた。グレーからかすかに赤みを帯び、ベージュ色になる。ベージュ色から黄色に染まりはじめ、そこからじょじょに緑色へ。枯れ色、香色、山吹色、うこん色、黄蘗色、刈安色、鳥の子色、ヒワ色......日本の色には、深い味わいの名前がつく。
お山はまだ春のかすみにおおわれて淡い彩り。何と微妙な色合いなのだ。そこに山桜のうすピンクの刺繍が点々と施され、高尾の美は極まる。きっと日本の美の職人は、こういう景色を眺めて自分のものにしていったのだ。

「ステキーーーーーーッ!」
山に向かって雄叫びをあげる。大声を出さないと、この絶賛は聞こえないだろうから。

すると、山は笑うのだ。いや、ホントに笑うのだ。
それは褒められたから笑うのだろうか。それともアホな私を笑っているのか。いやいや、つらい冬を乗り越えて、これからうれしい事でもやってくるからなのだろうか。

なんだかお山はうきうきと、いや、「ほっほっほ」と、笑っている。

ニンゲンの目先の利潤や、はたまた善悪の二元論に振り回された、バタバタとした行為をへともおもわず、淡々と、静かに、ほくほくと笑いながら、ひと時たりとも立ち止まりはせず、変化し続ける。

そんなお山をたのもしくながめる。

大きく息を吸い込む。お山の本当の叡智を、全身であやかるために。

絵:coopけんぽ表紙「もみじ」

6 件のコメント:

リス さんのコメント...

お山が笑っていますね。
こんなにいろんな色があるなんて。
パッチワークのような、にぎやかな。
この時期にここにいる幸せ。

つくし さんのコメント...

お、リスさんもお山が笑っているのがみえますか。
よかった〜。

ホントに幸せ。みんなでお山に向かって幸せ踊りでも踊りましょう。

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

山は偉大です。
ノミみたいな人間が何本か木を切っても
変わりない姿で、座っています。
裸になってもじっと座っています。
んで、きっと、人間滅亡した後も、ぢっと
座っていることでしょう・・・。
自然を救おう!って、ノミが言うことでは
なくって、地球や山からすると、「人間を
救おう!」っていうのが正しいんじゃない
のかな。

つくし さんのコメント...

まさにーーーーーっ!
おっしゃるとおりーーーーーーっ!

ノミがわーわーさわいでうるさくなったら、
お山や地球さんが、くしゃみをしたら、ふっとびます。
「自然を救おう!」ってノミがいってるのを、腹を抱えて笑っているんじゃないだろうか。
え?お山が笑っているのは、その意味?

いや、もっと懐広く、
「ほっほっほ。かわいいやつめ」と微笑んでくれているのかも....。
おそれいります。

早いとこ、お山や地球さんに救ってもらおう!

はっちい隊長 さんのコメント...

いい絵だねえ。うれしいなあ、こんなん描いてもらって、お山にかわってお礼をいうよ。

つくし さんのコメント...

はっちい隊長ーっ!

もったいないお言葉、おそれいりますっ。

今ガンガンにお山は高笑いをはじめました。ダンナはそれに心が触発されて、毎日うろうろ出かけております。
また面白いのが見れます。

野草のおかげで元気になっていってます。
はっちい隊長のおかげ。ありがとう。