2011年2月10日木曜日

恐怖のお膳立て




私は恐怖の固まりだ。
今回、自分が権力にいかに弱いかをまじまじと見せつけられた。それはその手の同じ問題で、過去に苦しめられて来た経験が津波のように襲って来たからだ。

ある日突然手紙が来る。その内容に脳天カチ割られたみたいになる。過去の記憶が怒濤のごとく押し寄せる。あのときこうつらかった、その時もあんな思いをした。。。。しかし、その手紙を受け取ったその時、ことは何も起こってはいない。ただ手紙があるだけだ。事実はその手紙を受け取ったら、その後どうなるかということがわかっているだけだ。

この世は不思議なもんで、その道のプロフェッショナルがたまたま私の近くにいてくれた。それもほんの短期間だけ。もし彼女がいなかったら、私は今頃どうなっていただろう。今回彼女には本当にお世話になった。私の状況は、彼女でもわからないことであり、忙しい中を寝ずに調べ尽くしてくれた。そのかいあって、あれやこれやと必要な書類を集め、彼女のおかげで、きのうやっと私ができる限りのことをやった。結果はどうなるかは全くわからない。あとは運を天に任すしかない。

NY時代の友だちが言った名言「その人が乗り越えられる問題しかやって来ない」。まさにそのとおり、運命は実にタイミングよく、彼女と出会い、私が乗り越えなければならない問題をもってきた。全く誰がお膳立てをしているのか。私自身!?

そう考えれば、何もかもがそんなふうに人生は動いている気がする。その問題はなぜやってくるのか。それはその人が何か気付かなければいけないことであり、そのまわりにくっついている恐怖とは何かを知るきっかけをもたらしてくれる。

手紙を受け取ってから、恐怖は私につねにつきまとった。今この瞬間は何も起こっていない。しかし人はなぜ恐怖するのか。それは、過去に起こったことを思い出し、これから起こるであろう未来のことを考えて震えるのだ。
 
私たちはその厄介な「恐怖」を外すにはどうしたらいいのか。
その方法は、克服しろ!とかコントロールしろ!とか、勇気を持て!とか言って、恐怖をふるい落とそうとする。しかしそれは単に恐怖を増大させるだけなのだ。私たちはまず、恐怖とは何かを理解する必要がある。

私たちの頭の中はつねに過去と未来を行ったり来たりしている。過去は既知のものであり、未来は未知のものである。
「あの時あんなことがあったから、未来にそんなことが起こらないようにしたい」という思いが駆け巡っている。しかしそれを考えている今この瞬間、何も起こっていないのだ。恐怖は過去と未来だけを行き来しているが故に起こってくる感情なのだ。

心はいつも何かにしがみつきたがっている。目に飛び込んでくる物質に反応する。コップを見たら、珈琲を思い出し、珈琲飲みながら、「あ〜、ふじだなの珈琲はおいしいなあ〜」となり、「あのおじさんどうしてるかなあ〜?」と思い出す。そのまま興味はおじさんに移り、おばさんに移り、町内会に移り、梅祭りに移り。。。。と連想ゲームが行われる。はたまた、部長に「なにぼけっとしている」といわれて、「な、何よー。珈琲ぐらい呑んでたっていいじゃないの。あたしは息つく暇ももらえないの!だいたい部長ったらねえ。。。」と続いていく。過去を思い出し、未来をうれい、そして未来に夢を託す。

私たちは延々とこう言う心の連想ゲームをやっては恐怖しているのだ。
それは生きている実感を得られると言えるが、それではいつまでたってもその洗濯機の中でぐるぐる回っているだけなのだ。
仏教で瞑想するのは、そんなふうにぐるぐるぐるぐる回っている心を静めるため。しかし残念なことに、どうして心を静める必要があるのかを忘れている。そして心を静める方法論だけが残ってしまった。だからお経を読んでみたり、ひとつの文字だけを見つめていたり、自分の組んだ手の中に地球を思い描いてじょじょに小さくしていくことをやっているのだ。

そんなことしても日常の中では相変わらずぐちゃぐちゃだ。お坊さんはそのぐちゃぐちゃから逃れるために山にこもったりするけど、それは雑踏の日常から逃げているだけなのだ。

心を静めるために瞑想するのではなく、心がどんな特徴を持っていて、どんな動き方をするのかを知ることが、そしてそれを観察することが、本来の瞑想なのだ。恐怖と戦ってはいけない。振りほどいてはいけない。勇気を振りしぼらなくていい。恐怖することを非難してはいけない。ただそこに何があるのか見るのだ。

そうはいってもこの50年近く積み重なって来た恐怖の習慣。ほっといたら、すぐに取り囲まれる。しかし「あ、また怖がっている」と気付き、その恐怖のなかにじっと居座ることで、心が静かになっていくのを知る。その繰り返しが、やたらに恐怖しなくなっていく自分を発見することになるのだ。

これってたタダし、セミナー行かなくていいし、今この瞬間にできて、お手軽だぞー。


絵:カットイラスト/窮屈な地球さん

4 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

お疲れ様です。ちょっと困った事態ですね。
ただ、とりあえず今できることをやったなら
まずはお酒飲んで忘れてしまいましょう!!


人間にできて他の動物にできないこと。
-意図して相手を笑わせること
-将来のことで心配すること
の二つかなぁ。と思っています。
そのおかげで、こんな弱い人間がここまで
のさばってこれたんだと思います。
他の動物にとっては迷惑な話かも知れない
ですよねぇ。

つくし さんのコメント...

そうだー、お酒飲んで忘れちゃいましょう。
なんか来たとき、考える。

人間に出来て他の動物に出来ないこと。
なるほど。
その二つは確かにそうですねえ。

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

もう一個あった。
後悔すること・・。

つくし さんのコメント...

あ、犬には出来ないねえ。
(ほんとはやってたりして。。。?)