2009年11月16日月曜日
切った貼ったの人生
知り合いにAさんというおばさまがいる。友達と呼ぶにはずいぶん年が離れているから「友達」というのもなんだから、お知り合いということにしよう。彼女はちょっとおしゃれな喫茶店やお店や場所を見つけてくると、私のところに電話をかけてきてくれて、「いっしょにいこう!」と誘ってくれる。
いつも元気で、歩き回ってはそこらへんの人たちとすぐ知り合いになってしまう。街で「機関銃のようにしゃべるおばさん」といえば「ああ、あの人ね」とすぐわかるくらい有名。
そんな彼女は若い頃から病気がちで、入退院をくりかえしていたらしい。彼女流に言うと「あたしなんて、切った貼ったの身体なのよ!」だそうな。とてもそんなふうには見えない。健康そのもので、毎日どこかしらを歩いている。で、どこまでも歩いていく。先日は八王子に誘われて、「これから高尾まで歩いて帰りましょう」と言われた。ちょっとびびって「ど、どのくらいかかる?」と聞くと「そんなのすぐよ。2、3時間でついちゃうわよ」と簡単に言ってくれた。
彼女に聞いてみる。
「薬飲んでる?」
なんでそんなことを聞いたかと言うと、先日町内会の人たちから聞いたことが、頭からはなれなかったからだ。町内会の「老人会」に出席された60才から80才までの高齢者の方々で、薬を飲んでいない人がいなかったからだ。ある人など、朝8錠、昼5錠、夜6錠(ということは1日19錠!!)毎日飲んでいる。よく薬を飲み間違えて大変なことになった話を聞くが、これでは間違えない方がおかしいくらいだ。
そこまで薬をのまないと健康になれないのか?というより、そんなに薬をのんで、よく平気でいられるなあ...と。むしろニンゲンの強靭さを感心せずにはいられない。しかし一方で、これは製薬会社の陰謀じゃねえか..?と、勘ぐってしまうのだ。
で、彼女いわく。
「薬?薬なんか飲んでないわよ。これっぽっちもね」
「へえ、なんで?」
「だってあなた、これだけ手術や薬に頼ってきたあたしが、やっとわかったことは、薬では病気は治らないって事よ」
「じゃあ、何で治すの?」と私。
「食事よ!食事!それとストレスためないことね。言いたい事は、はっきり全部言う!」
そんなAさんだが、ちゃんとTPOはわきまえている。言ってはいけない事もちゃんと知っている。そしてぐだぐだ考えない。考えを引きずらない。完全に自己完結している人だ。
近頃は高齢者の方と話をしても「年がいくとねえ〜....になるのよ」とか「年取ったから....になっちゃった」などとよく聞く。どうも口癖になっているようだ。そういうことによって、自分の老いを受け入れようとしているのか、いいわけをしているのか。そのあとに続く言葉は「あんたもなるんだから、気をつけなさい」だ。そんな言葉は私を元気づけてはくれない。ますます縮こまってくる。
Aさんの言葉には説得力があった。心の奥底にポンとひびいた。やっぱそっかー、そうだよな。
いちいちの言葉が、この人は何かを知っている人だな、と感じさせてくれる。そこらのありきたりのテレビでよく使う言葉なんか使わない。私を縮こまらせてはくれない。反対にもっと大きくなりなさい、と言われているような気がする。
こういうおばさまは、この地球のどこかしらに密かに存在しているのだ。そういう人たちがこの世を根底から支えてくれているのかもしれないなあ。
追伸:先日うちの畑にはじめて連れて行った。彼女は草ぼうぼうの畑のまん中に立って、
「ほーっ、ほっほっ!畑はこうでなくっちゃあねー!」
と、雄叫びをあげてくれた。
絵:ラブロマンスペーパーバック表紙
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4 件のコメント:
雑草の最盛期を見せたかったですね。
そうねえ〜、見せたらなんていうかな?
なかなか味わいのあるおばさまですよ。
あ~~、わたし、あと何十年かたったら絶対そういうおばさまになるんだ!
元気で正直なおばちゃまに!
ぜひ、なっちくれい!
この世はそーゆー偉大なおばちゃまを待ってるのだ!
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