2024年8月22日木曜日

写真集の寄付を募る




「おれ、写真集出したい。」

と、ダンナが突然言い出した。


彼が写真を撮りだして40年になる。心の中ではいつか写真集を出したいと思っていたらしいが、それを形にするほどに突き動かされるものはなかったようだ。

それが2ヶ月前その思いが出てきたのは、その頃知り合いの写真をまとめて写真集を作った経緯があったからだ。


膨大な量の写真を一冊の本にまとめ上げるには、相当な集中力を必要とする。

知人のそれを扱ったことで、一冊の本の流れ、作品をまとめあげる「何か」がわかったようだ。


「おれさ、これはみんなと作りたいと思ってる」

「どういう意味?」

「自分のなけなしの金を使って作るんじゃなくて、みんなに寄付を募りたい」


唐突な彼のアイディアにびっくりした。

「いや、自分もびっくりしたんだよ。こんなアイディアが出てくるなんて。」


彼を知っている人はわかると思うが、相当にプライドの高いやつだ。人のお金をあてにして写真集を作るなんて、以前の彼なら思いつかなかったことだ。

しかし昨年のつらい鬱の経験以来、彼の中で何か変化が起こり始めていた。


「写真とは、被写体なしでは成立し得ない〈関係性〉の賜物ですが、友人や知人との関係、協力により生み出される写真集、公的な出版社から発売されるモノでもなく、完全自費の私家版でもない、そんな写真集のアイデアを閃いたのが2ヶ月前、フォトグラファーにとって写真集は、遺書であり遺言、一方的なラブレターなのですが、最高にカッコいい写真集を作ります。

皆さまのご好意、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いします。


海沼武史 拝  」                                                                                 



寄付を募る言葉に彼の思いが込められている。

『友人や知人との関係、協力により生み出される写真集』とはどんなものか、私も見てみたいと思った。


今回はクラウドファンディングという、全く知らない人にも公に広げて募る新しい形のものではなく、知人に向けられて送られたものだ。とは言っても知人になればなるほど、無理強いをしてしまうのではないかという懸念があった。


しかしそんな心配よりも、なぜそんなアイディアが浮かんだのか、その真意は一体なんなのか知りたいという好奇心が勝った。



目標額は写真集印刷代金の30万円~50万円。集まった額に合わせて部数を決める。少数部数で非売品。100ページ前後の2種類の写真集になる。こんな安い金額で写真集ができるのかと思うかもしれないが、今の時代そのぐらいで印刷、製本まですることができる。もちろん私のデザイン及び版下料はなしだ(笑)。

ご寄付いただいた方には、出来上がった2種類の写真集をお渡しする。




8月12日に知り合いにメールを送ってのち、どんな反応が帰ってくるのか恐る恐る見てみると、送ってそれほど経ってないにもかかわらず、今現在目標額に達しつつある。



毎日次々にやってくる彼への賛同のメッセージに、二人とも感動が止まらない。


「え?いいの?本当!? うわ~~~っ!ありがとう!」


こんなにも人は優しいのか。

こんなにも人は愛に満ちているのか。




「オレ、今まで感謝ってことをあまり考えてこなかった。

感謝すると、なんだか自分が溶けてしまいそうで。。。」


そうなのだ。

愛とは、溶けてしまうものなのだ。

溶けて一つになってしまうものなのだ。


自我は、人と分かれていたい。個別で、特別でいたい。

しかし感謝は決して人を個別にさせてはくれない。

どうしようもなく、ひとつになるものなのだ。


彼も私も、今、人々の思いをダイレクトに受け取っている。

愛を受け取るには力がいる。

感謝を受け取るには勇気がいる。


私たちはその強さを学び始めている。


また、行動にうつさずとも、彼の呼びかけに心が反応してくれた人々もいるだろう。

どんな形を取ろうともそれは愛の思いだ。

自分の中から愛の思いが湧き上がってびっくりするものだ。

私たち二人の知らないところで、そんな体験さえ呼び起こしているのかもしれない。


彼のこのアイディアの真意はここにあったのかと思わずにはいられない。

すべての出来事が、心を解放するために起こっている。



実際、彼が写真集を作ろうと考えたのも、

私が3年前にある人から頼まれて絵本を作ったことから繋がっている。


一つの出来事が連鎖してどんどん拡張していく。

いったい何が起こっているのか。


いや、今までもこうしていろんな出来事が起こっていたにも関わらず、

その奇跡に気がつかなかっただけなんだな。

一瞬一瞬が奇跡に満ちている。





ご賛同くださった方々、

また、私たちを見守ってくださっているすべての方々に、

あらためて御礼申し上げます。





追記:しばらく更新していなかった海沼武史のブログが、
「写真集メイキングリポート」として随時更新されています。
彼の写真への思い、編集にあたっての思いなど書かれております。
ご興味のある方は是非ご覧ください。











和紙で制作した作品のオンラインショップができました

ペーパーバックの表紙を制作した原画のオンラインショップです


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