2010年5月29日土曜日

畑の色





最初ピーマンを種から育てようとした。去年育ったピーマンから採った種だ。
ズボンのポケットに忍ばせて、あっためて芽を出させる「ポケットつっこみ戦法」で行く。しかしうんともすんとも芽がでない。しびれを切らして花屋さんでピーマンとナスの苗を買う。一個157円。(高いの?安いの?)

試しにそれぞれ3個の苗を買う。この荒くれブロンクス畑で無事育ってくれるだろうか。草ぼうぼうの中にお坊ちゃん育ちの苗をおろした。根元にあったボールのようなもの(おそらく化学肥料)を畑の外に捨てる。裏の山でとれた腐葉土を土に混ぜ、その中に投入。その後順調に育つ。気を良くしてもう3個追加で買う。同じように入れたがなんだか新たな2個の苗が元気がない。水をかけながら様子を見ていると、葉の色の違いに気がついた。
最初に入れた苗の葉っぱの色がなんだか黄色っぽい。アレ?枯れたのかなあ?しな〜っと元気のない苗に眼をやると青々とした濃い緑色。ぴんぴんに元気な薄い緑の苗と、しな〜っと元気のない濃い緑の苗。。。ふつー「青々とした濃い緑の葉っぱ」というのがげんきがいい証拠と相場が決まっている。これって逆だろ。
しばらく様子を見た。
アレから一週間。6つの苗は完全に根付いた。今のピーマンの葉っぱの色は、みんな薄い緑色に変化した。ちょうどまわりの草のように若葉色に。

聞く所によると、濃い緑色と言うのはチッ素を多く吸収しているからだという。自然の野山で勝手に育つ草はだいたい若葉色をしていてあまり濃い色の草はない。オオバコとか特定のものだけだ。わしらの畑には有機肥料も化学肥料も入れていないそこらの野山の状態とおんなじだから、草と同じ色になっちまうわけだ。だから農家の人がこの畑を見ると、「あん?どこに野菜があるんだあ?」としかめっつらをする。あの見慣れた野菜の色ではないからだ。

元気のない苗がいてくれたおかげで、外からやって来た苗の色が変化していくのを目の当たりに見る事が出来た。

坊ちゃん育ちの苗は、栄養をタッブリもらって青々していたが、ムリヤリブロンクス地区に編入させられ、切磋琢磨し自分で栄養を取り込む、立派なブロンクス色に染まった。これから荒くれの道を突き進む野菜になることを決意したわけだなあ。
「悪いねえ〜、ピーマンさん。これからウ〜んと根っこをのばしてわしらのためにう〜んと美味しくなっておくれよ〜」
同じく若葉色をしたピカピカした絹さやがダイヤモンドのイヤリングのようにたわわに実って来た。これがまた、とろけるように甘い。

「イヤイヤ、わるいね、わるいねえ〜。」
そういいながら、採った先から絹さやをつぎつぎほおばるやまんばであった。


絵:けんぽ表紙/庭園

2 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

なるほどなるほど。
葉っぱの色はそゆことだったすか。
不思議だねぇ・・。

つくし さんのコメント...

今、ピーマンさんの苗は、ほとんど保護色化して、どこにはえているのかわかりません。これはある種の食べられまいとする防衛本能か!?