2009年12月16日水曜日

ある男の話





ある男が、アリゾナのサボテン広がる荒野を歩いていた。とつぜん足下にちくりと痛みを感じる。
男があわてて足を見ると、ふくらはぎのところに二つ穴があいている。
男はびっくりした。ここは毒蛇がうようよいる場所だった。

「こっ….これは毒蛇の牙のあとだ!お….俺は死んでしまう!!!」

男はパニックに陥り、必死で助けを求める。ちょうどとおりすがりの車に拾われて、病院に担ぎ込まれた。そのときすでに男の体は毒蛇の毒が全身に広がり、体中がふくれあがっていた。男は自分の死を感じて、息も絶え絶えに、医者の言葉を待った。
そしてその医者はこういった。

「これはサボテンのトゲのあとですね」



人というものはへんな生き物である。サボテンはうまいこと2つ穴をあけてくれた。だもんで男はてっきり「これはヘビの牙だ」と思い込んだ。すると心はありとあらゆることを妄想して、それを体にまでおよぼしていく。彼の体は思いで全身に毒を回らせたのだ。いや単に膨らませただけなのかもしれない。どっちにしろ、思いだけで体を変化させることができるのだ。

これは実際あったことらしい。
思いは、いかに体に影響を与えていくかということだ。たとえ思い違いであっても。



さて、その医者の言葉を聞いて、男の体の腫れが引いたのは言うまでもない。


絵:コージーミステリー表紙

2 件のコメント:

まいうぅーぱぱ さんのコメント...

ホントかどうか知りませんが、催眠術で熱く無い火箸を、「真っ赤に焼けた」と暗示させると、本当に火傷してしまう。って描写がありました。
ありうるかもね。

つくし さんのコメント...

それ、ホントでしょう。
人の心と身体って、ほとんどくっついているから。