2024年2月6日火曜日

石の静けさ



最近、ダンナが石を写しだした。


目の前の河原で拾ってきた石たちが家のそこら中にある。

石を写していると、心が静かになってくるというのである。


彼は被写体によって、自分の心が変化する面白さに気がついていた。

花には花の華やかさと楽しさが、枯れ木には枯れ木の美しさがあるが、

石はまったくの沈黙の中にいて、それが心地よいのだそうだ。

試しに私が持っているアンモナイトの化石を渡したら、

「これはうるさい」とのことであった(笑)。


私は毎晩窓を開けて夜の山を眺める時間を作るのだが、

興味本位でその中から一個の平べったい石を選び、

両手で包んで目をつぶってじっとしていた。


すると心がどんどん静けさの中に入っていく。

心の中の声が消え、さらにその奥まで入ってくようだった。

面白くなった私は、枕の下にその石を入れて寝てみた。

眠りに入る前から心は静かなまま。朝も本当に静かなまま起きた。


あれから私はその石と共に寝る。

人はこうやってこの石に特別な思いを込めていくのだろうか。


でも私はその石が特別な石だとは思えない。

石は単に私に静けさを思い出させてくれたのだ。

心の静けさとはこういうものだと。




昨日は雪が降った。

いつも雪と聞くとソワソワする高知県人の私が、

なぜか心がソワソワしていなかった。


最近、どこかボワーンとしている。


今まで、世界は私に爪を立ててきた。ネコが爪を立てるように。

この世界は私が気を緩めると、とんでもない悪いことが起こる。

だから常に見張ってないといけないと思っていた。

この世界はとてつもなく私に悪さをする世界、罰を与える世界、

悲劇を与える世界、強烈にリアルな体験をさせてくる世界だった。


ボワーンは、その実感がないのだ。

今は爪を引っ込めて、ネコのもふもふの手で、もふもふ触られているような。

この世界にリアル感がなくなってきている。



この感じ。ちっちゃい時にあった。

何もかもがボワーンとしてて、あったかくて安心している感じ。


でもいきなり「なにしよらあ!」「なにしゆうがぞね!」

と、訳も分からないまま親に怒られて、そのボワーンの中でいられないことを知る。

そして必死にこの世界の中に入ろうとした。


そしてある日、この体の中にかっちり入ったのだ。

「あ。入った」と、入った瞬間を覚えている。


今、そこに入る前の私に戻っている。

(気がするw)


静かで、あったかくて、安心している。





絵:おしゃべり




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