ある方の文章がとても素敵で、それを絵本にしたい。
ついてはその絵本の絵を、私に描いてもらえないかというお手紙だった。
彼女は主婦の方でした。
よく聞くと、気に入った文章があると、それを自ら書き起こし、自分で製本にして、
その文章を書かれた方にお渡しするという、稀有な方なのでした。
だがちょうどNYの仕事が立て続けに入っていたこともあり、
その旨も伝え、お断りしようと思っていた。
ところが、ある時散歩していたら、
不意にその絵本のイメージが頭に浮かんだ。
「ああ。こうすればできるかもしれない。。。。
え?やるの?やれってこと。。。?」
それはしゅんすけさんというひとりのカウンセラーの方のお話。
彼の中で目覚めた瞬間を
タクシードライバーという比喩を使った可愛いお話にしていた。
私に依頼してきた彼女は、
とてもその物語に惚れ込んで、どうにかして絵本にしたいと思っていたのだった。
お話は感情というものを細かく描いていた。
感情を絵にする。
それは形のないものを形にするという挑戦でもあった。
でも私の絵はその彼のお話に乗せて作れるかもしれない。
タクシードライバーの人物は描かないでおこう。
タクシーそのものが彼の肉体だ。。。
川沿いの遊歩道を歩きながら、私の中で覚悟ができ始めていた。
頼んでくれた彼女も、断られていると思っていた私の返事にびっくりしていたご様子。
こうしてNYの仕事、日本の仕事、次々に入ってくる仕事の忙しいさなか、
同時に絵本の制作も進み、三ヶ月後には一冊の絵本になっていた。
「愛タクシー」
かわいいそのタイトルそのままのイメージを表紙につけた。
中は白い空間をできるだけとって、
その空間に何かを感じて欲しいとレイアウトした。
制作、レイアウト、版下、校正、印刷製本発注。
自分でここまでできるんだ。
時代は変わったね。
自費出版も夢じゃないかな?(笑)
彼女がいなかったら、こんな挑戦は私にはできなかった。
イラスト料から製本料まで、すべて彼女一人が出してくれた。
私のわがままも聞いてくれ、彼女の舞台で、好きなように私は踊らせてもらった。
彼女のその勇気と大胆な挑戦に敬意を評したい。
ほんとうにありがとう。
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