2017年12月20日水曜日

白いススキ


菊芋を掘り起こす手が荒っぽい自分に気がついた。
心が小刻みに揺れている。

それはサルがダイコンを食い散らかしていったのを見たからか。
それとも、さっきまで小さな葛藤を抱えていたことか。

作業をやめて、あたたかい缶コーヒーを買ってくる。
草の上に長靴を脱いで裸足で座る。
目の前の山の黒いシルエットをバックに、白いススキが冬の光をあびて光る。

心をじっと見つめる。
自分の感情を見るようになって、心がどんなふうに変化をするのかを見て来た。
そのため、内側からあふれてくる感情に、ずいぶん正直になっている。
その感情にただ気づく。なにもしないでただ見続ける。
ただそれだけなのに、それが何かしらの力が湧いてくるのを感じていた。



人は感情を、いい感情と、悪い感情にわける。
いい感情は受け取るが、悪い感情は受け取らない。
そうやって、えこひいきをしてきた。
私もそのうちの一人だ。

だが人生は、必ずしもいいことばかり起こらない。
だから悪いことが起こった時は、なんとかしてその悪い出来事や、悪い感情を回避したり、見ないようにしたり、逃げたり、ごまかしたりする。

でもその感情はなぜか居続ける。
消えたように見えたとしても、またあらわれてくるのだ。
どうしようもなく、受け取られない限りは、それはひょんなことでやってくる。



「悪い感情は、いけないことなのか?」
悪い感情、つまり苦しい感情は、受け取ってはいけないことなのか?

無意識に、この重苦しい感情をなんとか消すために、向かい合っている自分に気がついた。
それはまさにその感情に抵抗しているってことじゃないか。


「苦しくっても、いいじゃないか。
苦しいことの、どこがいけない?」
そうひとり言を言っている自分に、にやりとした。


目の前の白いススキがあいずちをうつように、ゆらゆらとゆれた。


絵:『ススキと秋の山』

2 件のコメント:

  1. 何と言うか、私もその場に居合わせたような不思議な感じがしました。『ススキと秋の山』の絵も繊細で好きです。

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  2. ゆうさん、コメントありがとうございます。
    ゆうさんも、きっと似たような感覚をもったことがあったのでしょうね。
    自分の感覚に正直になるのは、すてきなことです。
    その感覚を、そのまんま味わってあげて下さい。

    ススキの絵、ほめていただいて、嬉しいです。
    ありがとう。

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