2023年2月14日火曜日

幸せへのまわり道

 



心がふさいでいた。

静かではあるものの、絶望を感じていた。

早くここから抜け出したい!と。


そしてふと気になってある映画を見た。


それはアメリカで34年間、子供向けの番組を作っていた司会者のと

それを取材した記者との、実話に基づいたお話だった。


「幸せへのまわり道」

トムハンクス主演の映画。


映像が古いイメージなので、てっきり古い映画だと思っていたが、

その割にはトムハンクスが十分年老いている。

2020年に上映された新しい映画だった。


舞台は1998年ごろのNYとピッツバーグ。

あの頃NYにいた私は、その映像に生々しさを感じる。


ビルとビルの間の狭い路地に固まるゴミ。

デコボコした地面。

地下鉄の落書きは消えているものの、

引っ掻くように窓ガラスに書かれた落書き。

出版社のオフィスの様子。

窓側にあるボスの個別の部屋。

机の上には後ろが出っ張ったパソコン(笑)。

どっしりと重く冷たいNYの街。

私の記憶の中にあったNYがそこにあった。


その中で展開されるトムハンクス演じる、超有名な司会者、Mrロジャー。

私は知らなかったけど。


彼の初めて会う人にさえ、大きな心で迎え入れるその姿を見たとき、私は心が震えた。


毎日大勢の人から相談を受ける彼の、まるで違うものの見方。まっすぐに見つめる目。


すべてを素晴らしいものを見るように見る、その彼の喜び。


見せ場でもなんでもないところで、私は泣いていた。

何が起こっている。。。?



「今、私にとって一番重要なことはなんだと?」

「分かりません」

「ロイド・ボーゲルと電話で話すことだ」


ここで泣いてしまう(笑)


今ということの重要さを、すべてがここに集約されていることを、

どの瞬間も大事だということを、

そしてそれがありのままであることを。


大人は、子供を早く大人にしようとする。

それは消費者にするためだと。


その存在が、そのままでいることを否定する大人の世界。

それを無意識に子供に押し付ける。




彼がいるところ、全てに幸せが広がっていた。

小さな時から彼を見て育ったアメリカの人々。

年老いても彼の思いは心のどこかに残っている。


彼は、老若男女全員の心に、何かを思い出す要石を置いたのではないか。



そう思った時、911の頃のことを思い出した。

私はあの時NYにいた。


あの事件の後、アメリカ中のすべての人々が、優しくなったのだ。

そこには愛が溢れていた。すれ違う人々が、見ず知らずの人々が、

それぞれ互いに思いやりをもって接していた。


彼に触れる人々がそれを思い出したように、

あの時、あまりにも緊張を強いられたあの時だからこそ、

私たちが持っている真実を思い出させる力になっていたのではないか。



すごい仕事を成し遂げた人だった。

アメリカは時々そういう人々が突然現れる不思議な国だ。


彼は奇跡のコースを生きている人だった。


静かな絶望の中で、私はこの映画を見せてもらった。

その後ふつふつと湧き上がる力に、

それまでの悲しさは消えていった。


この世界から抜け出す前に、

やることはあるのだと思い出した。





絵:水滴神





3 件のコメント:

  1. つくし様

    寒くなってきましたね。手がかじかみます。東京なのに^^

     長い篭り生活に、私も少し心弱体化しております。
    仕事はすべてスタッフに渡し、呉は只今「プー」です。
    ボケ始めた?頭を抱えながら、ひたすら70年の片付けに日々を費やし....
    「どうやって生きていくべ?」と、老人ホームなんぞチラチラ探しつつ....

    元気ですか?

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  2. 外の美味しいものをたくさん食べ、太りましょう^^
    脳ではなく胃で物事を考えましょう。

    「都心という名の「動物園」へ散歩に行く。
    ボーリングか、先日新宿で迷子になった。
    めげないめげない と念仏唱えながら
    「シェアハウス」「サ高住」探し中の婆婆呉より

    あひゃひゃひゃあーー
    さて、飯めし!!

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  3. くれ姉さん、

    返事が遅れてかたじけねえ。

    やることないと、ポケーっとするんでしょうか。
    そんな日々もいいかもしれん。
    だってあまりに姉御は頑張りすぎたんだもの。
    ここらでゆったりくつろぎましょう。
    え?貧乏性がそうはできん?

    なんとかなる。
    だんだんそんな気がしているのでありました。
    ちっとも慰めにならんか!
    すまん!

    飯食って、次いこ!


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