2022年3月20日日曜日

静けさが歌う


 

朝目を覚ますと同時に考えが浮かぶ。


「今日はあれやらなきゃ。」

「昨日の役員会であの人はああ言った」


今、私の心のマイブームになっている話題がやってくる。

そして私はその話題に乗る。


「そうだそうだ。あれはこうやって、

あの人はこう言ったんだ。。。」


その現れてくる言葉に気がつく。


みんなこの世界のことだ。

このふっと浮かぶ言葉が、この世界を支えている。


そうやってこの「ふっと浮かぶ考え」が、

心をこの世界に閉じ込めておくんだな。

「そうだそうだ。この世界があったぞ」と。


これがコースのいう「あなたは何も考えていない」とうことだ。


ふっと浮かぶ言葉は、自我の声。

はっきり聞こえる大きな声。

自我はこの世界があると思わせておきたい。

自我が作り出した世界だから。


言葉は具体的だ。

具体を表すために作られた。コーヒー、テーブル、私、あなた。

形象だけにフォーカスするように促してくる。


世界はそれしかないのだと。

それだけが唯一、君が住んでいる場所で、一番確かなものだと。

それ以外、考えてはいけない。

想像もしてはいけない。

いいかい。

それ以外のこと思い出そうとしたら、とんでもない目にあうぜと。




自我の考えなど、思考とも呼べない。

ただの繰り返しのカセットテープだ。

61年間、擦り切れるまで再生ボタンを押し続けてきた。


でもそのテープは私を大きくしない。自由にしない。解放してはくれない。

よく聞けば、私を苦しめるために、

形を変え品を変え、バージョンが変化しただけの下手くそな歌だった。


本当の思考は、その考えの背後にある。

静けさの中にある。


その思考の仕方を、この世界の見方を、

知っているものに教えてもらう。


言葉のない思考。

具象へのフォーカスをやめたところにある抽象。


そこに触れていくと、この世界の深刻さが消えていく。

実在するものが徐々に現れてくる。



静けさが、歌っている。




絵:「葛」/和紙




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