「だいぶなれましたね」
早朝、お客さんにいきなりそういわれた。
「え?あ、はい。おかげさまで。。」
なれないバイトを始めたのが1年前。初めの頃から、ずっと見てくれていたのだ。
それまでスムーズに動いていた手が、急にぎこちなくなる。
「そういわれると、なんだかきこちなくなっちゃいます。。」
苦笑いしていると、
「すごい挑戦ですね」
歳の頃は50代後半、出勤前のきちんとした身なりの彼女は、私にむかってにっこりと笑った。
挑戦。。。。
彼女の言葉が耳に残った。
そういえば、私はずっと挑戦を続けてきたなあ。
美大時代に、親にナイショでもうひとつ音楽の学校に行ってたこと。
デザイン事務所を転々とし、早いうちからフリーのイラストレーターになったこと。
ニューヨークでイラストレーターとして挑戦したこと。
アーティストグリーンカード取得に挑戦したこと。
グリーンカードも手に入り、いいレップに入り、仕事もがんがんに忙しかった。
しかし悠々自適なニューヨーク生活にピリオドを打ち、
日本での田舎生活を始めたこと。
しかし悠々自適なニューヨーク生活にピリオドを打ち、
日本での田舎生活を始めたこと。
200坪の畑で、無肥料栽培に挑戦していること。
そして、今、バイトをしていること。。。。
これは、挑戦なのだろうか。。。。
きっかけは1年前の個展。11年ぶりの東京での個展は大盛況だった。
作品の中に、あたらしい道が開けた実感があった。
そしてその時を境に、イラストレーターの仕事がぴったりと止まったのだ。。。
生活のためにバイトをしている今の現状。
これのどこが挑戦なのだ?
挑戦というよりは、苦しみだ。屈辱だ。
まるで「きみの才能は地に落ちた」と言わんばかりの仕打ちではないか。。!
挑戦というよりは、苦しみだ。屈辱だ。
まるで「きみの才能は地に落ちた」と言わんばかりの仕打ちではないか。。!
今までは、はっきりとした「目標」があった。
だが、これは「私」が意図しないところの、運命の「目標」であり、ひょっとしたらそれを今、挑戦中なのかもしれない。。。。
先程の彼女は、単に私が60過ぎに見えて、
「こんなご老人がこんな所でバイト。大変だろうな。。」
と言う思いだったのかも知れぬ。
確かにこのバイトは、今の社会の人々の生活を垣間みる。イラストレーターであったら、決してのぞけない世界。その社会の断片を見ながら、私は日々、洞察をもらい続けている。今まで気づけなかったことが、どんどん気づきはじめて来る。
ここから先は、何が起るのか全くわからない。
何を目標としているのかもわからない。
ただ、私は「何か」に挑戦しているようだ。。。。
絵:「くもまつまきてふ」
9月の個展に向けての作品。素材/洋紙、和紙、水彩、クレヨン
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