2015年4月27日月曜日

ヘビと目が合う



いつものコーヒー屋さんにむかう途中、道の脇に川に降りる小さな石の階段を見つけた。私はふと川に降りたくなった。

10段ほど降りると、小仏川のほとりに出た。キラキラ光る水面が美しい。所々で顔を出す岩の上には、きれいな若草色の細長い草が頭に毛がはえたように茂っている。しゃがんで水をさわり、そのおもしろいコントラストをながめていると、水の中を一本の赤茶色のヒモが流れていく。
よく見ると、ヘビだった。

「きれいなヘビだなあ。ヘビはこうやって移動するのか。。でも川上にもどるには、地上を這ってもどるのかな。。?」と考えた。

すると、それまで脱力したように流されて、目の前を通り過ぎて行ったヘビが、急に川の流れに逆らうようにくねくねとカラダをくねらせながら、力強く川をのぼりはじめたのだ。

「ほう。。。すごい力だ。たのもしいなあ。」
そう思って見ていると、ヘビはどんどんこっちに向かって泳いできた。
「え。。?」

赤茶色の肌に小さな黒い斑点の柄が入った美しいヘビは、小さな頭をちょこっと水面から出して、こっちに向かって泳いできたのだ。それはなんの躊躇もなく、まっすぐ私に向かって。。。
小さく可憐な瞳は私をじっと見つめて離さない。どんどん距離が縮まり、ほんの40センチ。ち、近い。。。

心臓がドキドキする。マムシでないことはわかる。ヤマカガシでもなさそうだ。もしそうだとしても手荒なことをしない限り、噛まれることはない。でも彼女(?)がここにきたなら、いったいどうなるの。。?
「や、やっぱ、こわいよ。。。」

私はしゃがんだままゆっくりあとづさりした。すると私の態度を見たへびはいったんそこで止まる。まるで空中をホバーリングするクマバチのように、川の流れにカラダを流されないようにバランスを取りながらその場に停止した。

そして私の心を読みとったかのように、
「あ、そ。あたしのことこわいの。じゃあ、いいわ」
と、少し後ろに下がったのち、また川に流されはじめた。

立ち上がって、その様子をながめる。するとまたきびすを返すかのように、力強く川に逆らって泳ぎはじめ、少し離れたところで彼女は上陸した。小さな岩の上に生えた草の影にカラダを隠しながら、やっぱりこっちを見ている。もうさっきのようにこちらにはよって来ず、私の心の様子をジッと観察しているかのようだった。

「じゃあね。さようなら」
そういって私はその場を去った。


それからずっとあのヘビのことが頭から離れない。帰ってネットで調べた。ジムグリという地中に住むおとなしいヘビだった。危ない状況でなかったことは確かだ。だけどそんなことよりも、どうして私に向かって泳いできたのか。
彼女は明らかに私を意識していた。攻撃しようとしていたわけでもなさそうだ。でもなぜ。。。


ひょっとしたら、私の心を読んでいることを教えてくれたのではないか。
「知ってるよ。あなたが今どう考えているか」と。

畑にいてもそれは感じる。畑の植物たちに見られているという感触を度々感じる。
先日出会ったサルもそうだった。私がそのサルに気づいた瞬間、そのサルも私に気づいた。すべては同時に起こる。

あの時、ヘビは私の心に反応したのだ。「こっちに来て欲しい」というおもいと、「いや、怖い。来ないで」というおもい。そのどっちも的確に気づいていた。その私のどっち付かずの反応は、そのまま彼女の行為に現れていたのだから。

山で野生動物にあうと、こちらが怖れを抱くと、向こうも怖れを感じて襲ってくるという話を聞いたことがある。アマゾンの川の中でワニと遭遇しても、静かにしていると襲わないとも聞く。熊を見て恐怖を感じるから、熊も自分の中に恐怖を感じ、身を守るためにおそってくるのだ。それはまるで鏡のようじゃないか。

もしあのヘビを川で見た時、「やだ、こわ~い」とおもったら、そのままヘビは流れて行ったのかもしれない。でも私がヘビに興味を持った。きれいと思った。どこかで触りたい。。とでも思ったのかもしれない。だから反応したのだとしたら、私たちは自分の心が今この瞬間何を感じているのかをさぐることは、とても有意義なことかもしれない。


2 件のコメント:

  1. まいうぅぱぱ2015年4月28日 16:33

    私も最近蛇を見ましたよ。青大将と(多分)ヤマカガシ。二匹で絡んでたから、きっとヤマカガシが狩ってたのかも知れない。写真を撮るのに近付き過ぎて、ヤバかったかも・・・

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  2. すげー、アオダイショウとヤマカガシの一騎打ちダアー。

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