2008年8月15日金曜日

大前研一


 
「この広大な宇宙の中で、たった一つの惑星、地球にしか生命はいない。」
小学校の理科の授業でこの言葉を先生から聞いて、私は耳を疑った。
「なぜなら、他の惑星には酸素がないからである」
びっくりした。「そりゃ先生、ニンゲンにかぎっての事だろ?」とツッコミを入れたくなった。
それから理科の時間がおもしろくなくなった。小学生の私は、こんなに広い宇宙の中でこんなちっぽけな惑星にしか生命は住んでいないの?そんなの絶対あり得ないと思った。でも先生は勝手に話しを進めていく。すべてが「地球にしか生命はいない」という前提で理科は進んでいく。科学は進んでいく。研究は進んでいく。まるで地球は平らだという前提で航海をするようなもんだ。きっとどこかでほころびがでるんだろ。そう見限ったもんだから、理科の通知簿は1か2だった。

最近、元宇宙飛行士のエドガーミッチェルという77歳のおじいさんが、「NASAは、宇宙生命体の事を隠している」とカミングアウトした。NASAは「何寝ぼけたことを言っている」と知らん顔した。たしかに77歳というご高齢では、少々認知症が入っていたのかもしれない、夢でも見たのを勘違いしたのかもしれない....とは、私は思えない。彼は相当覚悟を決めて公表したのだろう。
そんなニュースを日々目にしている今の小学生は、どんな感覚をもちはじめるのだろう。少なくとも私が小学生の時感じた「違うだろ」と言って閉じてしまった心とはちがうはずだ。この惑星以外に、何かもっとすごい物たちがいるかもしれないというワクワク感で、つぎの科学が動き始めるのかもしれない。それは地球は丸い、という前提によって航海するように。

大前研一:ハーバード・ビジネス・レビュー掲載

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