2010年6月18日金曜日

母にパンを送る





あれからパン作りはずっとつづいている。
メロンパン、アップルロールパン、クリームパン、よもぎあんぱん、チョコレートシート折り込みパン、コーンマヨネーズ、肉まん、ベーコンエピ、ガーリックフォッカチオ、フランスパン、カンパーニュ、クロワッサン、デニッシュ食パン、ソーセージデニッシュ、、、、。うまいかどーかは二の次に、よくもまあ、こんだけつくったものだ。

そんなおり、母からもらっていた抹茶をつかって抹茶シートをつくり、抹茶折り込みパンをつくった。抹茶の香りをちょっと強めに練乳との組み合わせがなんともあったかい我ながらおいしいパンが出来た。食パンの中に緑のマーブルが美しい曲線を描いた。
やるじゃん、私。一人ほくそ笑む。
しかしダンナに食わせると、
「おれ、抹茶興味ない」で片付けられてしまった。

ふん。この田舎もんめ。あんたはパンの上に赤や黄色のぴらぴらしたもんが乗っかっているおこちゃまなパンが好きなやつなのだ。大人味の抹茶など、あんたに食わせるには100年早いわい!
と、とっとと冷凍庫につっこんだ。


先日、母に宅急便を送る機会があったので、ついでに抹茶パンも送ってみた。電話では作っている話はしていたが、今まで送ったことはない。冷凍から冷蔵状態にして宅急便で高知に送ると味はちょっと落ちるかもしれない。まあ、話のタネにいいや、と送ってみた。

届いたとお礼の電話があったとき、パンの話はほんの少しでただけだった。前もって作ったパンを送った話などせず、私的にはサプライズのつもりだった。しかし彼女から驚きの声はなく、ただ「ノリの味がする」と言っただけだった。
ちょっとショックだった。

それからなんとなく、気分が落ち込んでいた。その後つくったフォッカチオも大失敗。ナニをつくろうか~という喜びもなく、今日も何となくメロンパンをつくっていた。
。。。抹茶パンを送ったのがいけなかったのかもしれない。彼女はなんせお茶に関しては地獄の舌をもっている。お茶の世界を堪能し尽くした人なのだ。ほんの少しの違いでさえも鋭いつっこみをする。そんなお人に一番最初に送ったパンが、抹茶だったのはまちがいだった。まず抹茶に練乳が入ってしまうことからして彼女にとっては邪道だ。これで私のつくるパンのイメージがついてしまった。「つくしのパンはまずい」と。

などとぶつぶつ考えながらメロンパンの生地をこねる。相変わらずメロンパンの生地はチョー扱いづらい!しかもこの強力粉がまた水分たっぷり含んだ扱いにくい国産のブレンド小麦だった。

べちゃべちゃ生地をギッコンばったん叩き付けながら、延々とぶつぶつ文句をたれている自分に気がつく。ああ。私は結局、母親に自分を認めてもらいたいんだな。そういえばどこかでいつも母にほめてもらいたがっている私がいる。今回も「すごいね、つくしちゃん!」と言われたかったのだ。この50近いおばはんが。いつまでたっても私は母の子供なのだ。

私だけなんだろうか。
いやひょっとしたら母は母で、私と同じように自分の母親に認めてもらいたかったのかもしれない。彼女はウチのばばあちゃんのことをあまりよく言わなかった。「あの人は頑固だ」「あの人のそばにいると圧力を感じる」などなど。でも母にあらゆることを教えて来たのは、ばばあちゃん。その地獄の舌もばばあちゃんから受け継いだものだ。母はどこかで彼女を超えようと、もがいていたのかもしれない。認められようと必死だったのかもしれない。そう思うと、なんだか母がけなげな少女のようにおもえてきた。母に対するいらだちも消えていた。

そのとき、電話がなった。
「あのねえ。今あんたが作ったパンを食べたがよ。このあいだは具合が悪うてよう分らんかった。よう考えたら私は人が作ったパンなんて今まで食べたことがなかった。お店で作ったものしか食べたことがなかった。今ようやっと人が作ったパンの味が分った。なんだか、あんたのパンはぬくいねえ。お店のパンはチクチクしたけん(剣?)があるけんど、あんたのパンはそんなもんどこっちゃあにのうて、なんというか、ほんわかとあったかいねえ。おいしゅうて、ぺろっとに二枚も食べてしもうた」

なんということか。この世はシンクロしている。母のばばあちゃんへの思いを理解し、母への気持ちがほぐれたとき、母もまた何かを理解していたのだ。
何かが溶解した瞬間だった。



さっき畑でミョウガの葉っぱをとってきた。昔よく母がこの時期になるとミョウガの葉っぱでメリケン粉を包んで蒸してくれた。中のあんこは決まってエンドウ豆のあんこ。ほっぺたが落ちるぐらいおいしかった。それでいつも私は母に、
「ねえねえ、これ売りや〜。お店やろう〜」といっていた。

今日は、北海道の田中さんから送ってもらった手亡の白あんこでつくる。
蒸し器の元気な音が、つゆの雨音と重なり合った。


絵:コージーミステリー表紙

8 件のコメント:

  1. まいうぅーぱぱ2010年6月18日 22:58

    蒸しパン嫌いじゃないけど、あんこはちょっと・・。
    って、おいらのためじゃない??
    こりゃまた失礼いたしました!

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  2. まいうぅーぱぱ2010年6月19日 23:15

    件名違いだけど・・・
    ネットからの拾得物です・・。
    数万匹×120群…丹波でミツバチ大失踪の怪
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100616-00000699-yom-soci

    こっちはおまけです。
    「チーズ蒸しパンは冷凍すると美味しくなる。」
    http://portal.nifty.com/2010/06/14/c/index.htm

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  3. しっとるわい。
    あんたたちはあんこがお嫌い。まちがってももっていきませんよーだ。
    チーズ蒸しパンはおいしいよね!どーやってつくるんだろ。今度調べてみよう。成功したら、持っていくよ。

    それにしてもこのニュース、はっきり言っちゃいましたねえ、原因はネオニコチノイドの可能性と。前は公のニュースでは濁していたのに。調べるとやはりスズメもツバメも減ってるようです。国はこの減農薬と銘打ったネオニコチノイドを推奨しているようです。日本のこれの使う量は、中国の100倍とも言われています。神経性のあらゆる患者さんたちから、果実とお茶をやめさせたら治ったとの話もあるそうです。日本の果実の残留農薬の基準値はEUと比べて100倍〜500倍も高いそうです。
    「減農薬の野菜」とうたわれていものほど怖いのかも知れませんね。

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  4. まいうぅーぱぱ2010年6月20日 10:12

    大人も子供も異常行動やらでおかしくなってますが、これも農薬の問題かもね。
    北九州市で後ろ足のないカエルが異常発生した。っつうニュースもありました・・。
    ぞぞ。

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  5. げげげ〜の鬼太郎。
    そのカエルの話は恐いねえ。ネオニコチノイドで妖怪あらわる!

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  6. 追加。
    ありとあらゆるところにネオニコチノイドがひそんでいる。

    http://sun.ap.teacup.com/tamarin/222.html

    最近の日本人の行動、おかしいもんね。こういうところに原因があるんかもしれん。

    おもわず、ウチの大麦で麦茶つくって飲んじゃいました(ビールにする分がちっとへりました。すんましぇん)

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  7. まいうぅーぱぱ2010年6月22日 7:00

    どっかの学者先生様(!)が、「人間はあと100年
    で滅亡する!」って、発言してましたね・・。
    まぁ、人間「滅亡論」大好きですけどね・・。

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  8. うんうん。滅亡論好きだよねえ。

    やっぱ、退屈してんだよ、日々に。

    刺激のある話題が好きなんだよ。ついでに私も。

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