ある日、人とのやり取りでいらっとするとしよう。
その場を離れたあとで、あなたはまたその場面をもう一度思い起こしていないだろうか。
そうすると、だいたい「なんだあのやろう。あんなふうにいいやがって」となる。
そしてまた仕事をしながら同じシーンを思い起こす。
「なんだなんだ、あんな言い方しなくてもいいだろう」と心でいう。
帰りの電車の中で、また同じシーンをくりかえしてイメージしている。
「なんなんだ。あいつは。だいたい最初からあいつは気に入らなかったんだよ。。。」
と、その「あいつ」との出会いのシーンを思い浮かべる。そこで選択されるシーンはたいてい気に入らなかったことだ。思い出せば出すほど、でてくるでてくるあのやろうとの気に入らないやり取り。。。その時点であなたはそのあいての欠点が山のように目の前に立ちふさがっているのを見る。だんだん気が重くなる。だって今回で切れる縁ではないからだ。それはお得意さんだったり、ご近所さんだったり、身内だったり。
切れないと思うと、ますます気が重くなる。今度会う時どんなふうにあえばいいのか。どんなイヤミを言ってやろうか、と。はたまたお得意さんならば、この思いを抱えたままで、なかったことにしながら、惰性で付き合うという選択をする。。。。
さて、ここで問題です。
「あいつ」とのやり取りで、実際にいらっとしたのは何回でしょうか?
答え=1回。
では、頭の中で、バーチャルにいらっとしたのは何回でしょうか?
答え=無限。
思考とはこのようなことに使っている。
実際の出来事は1回だけである。だがあなたの頭の中は、そのシーンを何度も何度もくりかえす。くりかえしては、そのつどはらわたを煮えくりかえして、また思い出す。
なんでや?
どうも思考とは、思考をしてないと気が済まないところがあるらしく、常に思考をしたがる。なぜなら、思考していないと思考そのものが消えてなくなるからである(笑)。だから「思考」は人間の頭に思考させ続けているようなのだ。
これを心理的に解釈すると、誰かが自分に何かをいった瞬間、何かを「言われた」と思う。つまり意見された、非難されたと思うのだ。
非難=自分がまちがっている、といわれていると思い、自己防御にスイッチが入る。自己正当化がはじまるのである。なのでそこはほれ、「思考」さんが自己主張のためにつかう大好きな「ああじゃないこうじゃない」論がえんえんと続くわけだ。
はて、それをえんえんとやって何か利点があるのだろうか。
「あるある。俺が正しいと主張できる!」
他は?
「え?他ってなんや?。。ああ。あいつがまちがってるってわかる!」
そりゃ、さっきの話と同じ論点じゃないか。じゃ、自分が正しいって分るって利点だな。
「そうそう。」
それだけ。
「え?ああ。。まあ。。それだけ。。」
じゃ、欠点は?
「欠点?そんなもんない!」
時間は?それを考えているあいだのロスはないの?
「まあ、そりゃ、多少はある」
多少?それを考えている時間があれば、もっと他のこと、仕事のこととか今度の商品の売り方とか、そんなアイディア出しのことに使えたかもしれんじゃない。
「こっ、、この考えだって仕事上のことだ!」
ああ、その「あいつ」はお得意さんだったのね。
「げ」
で、それを考えて、いい仕事上のアイディアが浮かんだ?
「う。浮かぶわけないだろ。むしろ気がめげた」
気がめげるようなこと考えてたの。
「だってしょーがねえだろ!あいつが悪いんでい!」
ああ、そうだった。あいつが悪いってことが証明されたんだったね。
「あたぼうよう」(いつのまに江戸っ子に?)
で、欠点は?他には?
「ない」
ほんとに?
「ないったら、ない!」
仕事したくなくなったんじゃない?
「おう。それよ、それ」
次のしごとんとき、どーするの?
「あー。。。。やだな。うん。あいたくねえ。でも仕事しないとおまんまくえねえしな」
やる気なくなるねえ。
「うん。。。」
あいたくはないし、だけどあわないと仕事になんないし。いやんなっちゃうねえ。
「はあー。。。いやんなっちゃうねえ。。」
欠点ってこれじゃね?
「あ”。。」
やまんばんちの前に川が流れていて、そこによくカモが泳いでいる。カモは時々縄張り争いをする。一羽が水辺に漂っていると、空から別のカモがやって来て、ぎゃーぎゃーと大声を張り上げて相手を突っつく。突っつかれた方もぎゃーぎゃー反撃する。2、3秒ぎゃーぎゃー言い合って、さっとお互いが身をひく。そのあとはなにごともなかったかのようにそっぽ向いてその場を泳ぎさる。
その姿を見てやまんばは腕組みをして「はあ~。生きるワザだなこりゃ。」と感心する。
カモさんは、あとくされないのだ。
もし彼らが人間の思考を持っていたらどうなるか。
「あのやろう。あそこまで俺の頭を突っつくこたあねえだろう。だいたい、ここは俺の縄張りでもあるんだ。最初にここを見つけたのは俺なんでい。今度会ったら、おもいっくそとっちめてやる!」
「あんちくしょう。前にも俺があそこは俺の縄張りだっていってやったのに、まだいやがった。なのに反撃してきやがって、俺の大事な羽毛が2、3本とれちまったじゃねえか。今度会ったらただじゃ済まさねえ。」
その後二羽のカモはずーーーーっと、心で文句をいいつづけました。だんだんイライラが大きくなり、その思考を止めることもしらず、そのうち身体が弱り、心労のために空飛ぶ元気もなくなりましたとさ。おしまい。
ああ、人間的思考を持たなくて良かったねえ、カモさん。
「そのあとはなにごともなかったかのようにそっぽ向いてその場を泳ぎさる。」
返信削除って、さりげないそぶりだけど、心の中はメラメラと・・・なってるカモね(笑)。
そうカモね。
返信削除そのじつ、だれに〜もわからん。