次の日の朝から手術が始まった。
控え室でじーっとまつ。手術中はそこに誰かいないといけないので、お昼ご飯も家族で交替で取る。
やまんばは、祈るという事をしなくなった。
祈るとは、自分の外にある、誰かの力をもらうという意味だ。そうなると、自分自身はそういう力というものを持っていないという前提になってしまう。だけど本来みんなものすごい力を持っているんで、べつに外の誰かの力をかりる必要はないと思っている。なのでオペ中も祈りはしなかった。
そのかわり、ニンゲンは光りそのものだと信じているので、父の本来のエネルギーを思い出してもらおうと、ひまなときに彼の中から溢れてくる強烈な光をイメージしていた。
「手術が終わりました。先生からお話がありますので、個室においで下さい」
まるでテレビドラマみたいな設定だった。
小さな部屋で先生が来るのを待つ。静かな時間の中で自分がドキドキしているのがわかった。
ヒタヒタヒタ。。。
スリッパの音がだんだん近づいて来る。
カチャッとドアがあいて、初老の先生が入ってきた。
「手術は無事終わりました。大きかったですよ〜。こんなにありました」
両手でがんの大きさを示した。でかい。。。
「なので、再発の怖れがあります。ま、出血もなく、とりあえず全部取り除きました。1時間半後には面会できますので」
「あ、ありがとうございました〜〜〜」
まさに神の声であった。権威に腰砕けするやまんばがいた。
集中治療室に横たわるとおちゃんの顔はすこしむくんでいた。体中にいろんなスパゲッティがくっついていた。
「気がついたら、もうおわっちょったがよ」
前の晩に寝られなかったとおちゃんは、麻酔と同時に爆睡していたようだ。足先をピコピコしきりに動かしている。看護士さんに「血栓ができんように、足先をしょっちゅう動かしよってよ」と前もって言われていたからだ。生きる気まんまんなようだ。
その日は一日集中治療室にいて、次の日に病状が安定すれば個室に戻る。やまんばは個室に戻るのを見届けてから東京に戻った。
昨日電話がかかってきた。早速歩き出したようだ。
病院の廊下をスパゲッティをぶら下げながら歩くとおちゃんの姿を思い浮かべて、にやっとしてしまった。
とにかく無事終了!良かった!!
返信削除おめでとうございました!
ありがとうございます!
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