人んちの畑にゲリラ蒔きしたのら大根はぐんぐん大きくなった。
やまんばは間引きしてほくほくした。
「どこまでおおきくなるんだろうねえ」
先日、畑の兄ちゃんから電話があった。
「あのよお。。オレの親戚連中がよお。。。」
聞こえないぐらい小さな声で兄ちゃんが言うには、お彼岸の今日、親戚一同が集まった。兄ちゃんは本家の跡取り。朝もはよからお彼岸の準備でいそがしかった。オオゴチソウを前にして宴もたけなわ、いい気分になった兄ちゃんが、うっかり口をすべらした。
「オレんちの畑でよお、近所のばばあが大根の種蒔きやがってよお。。。」
酒で真っ赤になった親戚の一番気むずかしいオヤジが、その言葉に引っかかった。
「あん。。。?あんだってえ。。。?」
さあ、それからがたいへん。
「地のものでもないやつに畑なんか触らせるんじゃねえ。だいたいおめえはだなあ、本家の跡取りのくせに、のらくらしてるからそんな事になるんだ。わかってんのかあ?ちゃんとせんかあ~!」
とまあ、こーんな調子でぶちかまされたらしい。
人がよく出入りする、開かれた土地といっても、やはり「地のもの」の土地に対するおもいは、なかなかすごいもんがある。気軽に踏み込めるもんではなさそうである。
聞き取れない小さな声は、すまんなあ。わるいなあ、と言ってるように聞こえた。
「わかった、わかった。ごめんよ~」
受話器を置いて、やまんばは兄ちゃんの畑の大根を抜きにいった。
そこには、やまんばがやった以上にていねいに間引きと土寄せをした大根の葉っぱがゆらめいていた。やまんばが知らないうちに兄ちゃんがそっとやってくれていたんだ。他のミヤマコカブと壬生菜の双葉のにも、畝立てをしてくれていた。
兄ちゃんがどんだけ野菜を大事に思っているかがよく分った。
ごめんよお、にいちゃん。やまんばの悪ふざけのせいで兄ちゃんを悲しませちまって。
だけどこんなことがあったから、兄ちゃんの野菜に対する愛情とやさしさを知ることになった。きっと兄ちゃんは、おもしろがってくれていたんだな。だからほろ酔い気分で、ぽろっと言っちゃったんだなあ。
またやまんばはやまんばで、のら大根は肥料なしでよく育つこともわかった。
残念なことが起こったように見えることでも、よく見たらそれが起こったことによって理解できたことや、人のやさしさなどがあきらかになる。
いいことの方が多いのかもしれんなあ。
秩序は粛々と動いているのだなあ。
ところで引っこ抜いた大根はって?
もちろんゆがいて中華ドレッシングかけて食ったよ〜ん。
ところで引っこ抜いた大根はって?
もちろんゆがいて中華ドレッシングかけて食ったよ〜ん。
ありゃあ・・こっちもひどい話だねぇ・・・。
返信削除お疲れ様・・・。
1つの残念に、3つぐらいの気がつくことがあった。
返信削除一石三鳥だあ〜。