2010年10月16日土曜日

虫天国





わたしゃ、畑で虫は殺さない。だって、たまに鎌で間違ってミミズをばっさりやっちゃった時の、あのつらさがいやなんだもん。まっぷたつになったミミズちゃんが二つになってのたうち回るあの姿は直視できない。だからできるだけ殺さない。でも「蚊」だけはゆるしてちょ。まわりをうろうろしているとおもわずバチン!とやっちまう。。。

なぜかしらんが、ウチの家の中で蚊以外の虫を殺さず、いちいちつかまえては家の外に出しているうちに、家の中に虫が入って来なくなった。同じ並びの家々では、ムカデもでるというではないか。と、いうことは虫さんが「あ、ここは、やまんばのうちなのね。で、僕んちはこのうちの外なのね」と、いいように解釈してくれて、棲み分けが行われているからかもしれん。(そーなんかやー?)

んだもんだから、畑でも誤ってと蚊以外は殺さず、フェンスの外に出す。または無視するのだ。そーすると、畑は虫だらけ。クモ、ミミズ、コオロギ、バッタ、カマキリ、カメムシ、てんとう虫、アブラムシ、毛虫、ヨトウムシ、アリ、その他いろんな訳の分からない虫、幼虫の天国。空中にはひらひらとチョウチョとトンボとミツバチが飛び交う。
野良仕事の合間にお茶を飲んでいるとき、そんな畑の光景がたのもしくうれしくなる。なんだかここは生命がいっぱいだあ~と、思わず叫んでしまうのだ。

隣近所の畑は違う。しーんと押し黙った土の上に、さくさくと野菜だけが育つ。うちみたいに、トマトの隣にキュウリがあったり、ナスの隣にニンジンがあったり、わけの分らん野菜のミックスの畝、なんて節操のないことはしない。キュウリはキュウリだけ!ニンジンはニンジンだけ!と、禁欲的な畑さんたちなのだ。


おとつい、道を歩いていると近所の農業兄ちゃんが、地下足袋はいてちゃりんこ大股で漕ぎながらやってきて、
「おうおう、今年の草はすごかったなあ~。近所のじじいなんぞ、みんな目を三角にして草ぬいてるぜい」と、いきがった。(いきがっているのか?)
そこでさっそく最近知った農薬の名前を披露してみる。
「みんなオルトラン撒いてるの?」
一瞬顔が曇った。しばらく沈黙があった。これはなにを意味するのか。オルトラン撒いていることを知られてしまったのか!とおもったのか、はたまた、「オ、オルトランってなんや?」とおもったのか。農業兄ちゃんはいつも私に農業のアレコレ知っていることをイキガって教えてくれるタイプだから、知らないことを知られては困るのか。。。?
しばらくの間ののち、
「ラウンドアップなら撒いてるぜ」といった。
ラウンドアップは除草剤じゃ。話がなんとなくずれている。し。。知らない横文字だったのか。。。?

さて、ラウンドアップなる名を聞いてしまった私は、さっそくネットで確認する。
でた。草を根こそぎ枯らしてくれる強烈な除草剤だった。私の母親であるスギナなど、土の下深く潜っている根っこまで速やかに、文字通り根こそぎ枯らしてくれる優れものなのだ。説明の中に「自然にやさしい除草剤」と書いてあった。おもしろい事を言うじゃないか。植物を根こそぎ枯らすのが自然にやさしいのであろうか。それをいうなら、「虫にやさしい殺虫剤」もありえる。ついでにいっちゃえば「人にやさしい原爆」というキャッチコピーもありえるのだろうか。

ということは、オルトランはまいとらんとしても(シャレのつもり)、ラウンドアップはここら辺では撒いているということか。ホームページでは環境にやさしいと畳み掛けるように言う。いかにも怪しい。調べりゃ、危なっかしいことだらけじゃないか。そういう液体が、この地に撒かれて川に流れ、やがて海に行き着くんだな。そーいや、近所で大豆と麦を交互に植えている畑がある。その畑の持ち主にはめったに会わない。草取りをしている様子も見かけないのに、この夏の強烈な草の威力にもかかわらず、その畑からは、一切草が生えていない。ああ、なんだかふくざつよねえ。。。
聞く所によると、そのラウンドアップとセットになっているのが、遺伝子組み換え作物。GM作物というやつだ。日本には特に菜種油のもとの、ナタネが入って来ているそうだ。キャノーラ油だ。そのGM作物が日本に種子の形で輸入されている間に、こぼれ種が芽を出し、花を咲かせ、いろんな雑草と交配を始めているらしい。アブラナ科の植物は交配しやすい。ウチの畑で採れた種もやっぱり交配しちゃっていた。アブラナ科の植物は1年草なのに、そのGMナタネは、日本で多年草に変わってしまい、樹のように大きくなったナタネも出てきたのだそうだ。
たぶんこれから日本の植生も大きく変わっていくのだろう。この勢いは誰にも止められないのかもしれない。

農業兄ちゃんにまたあった。あいかわらず草取りをしている。
兄ちゃんに、も一回オルトランの話をふる。
「んで、オルトランは撒いてるの?」
「いんや。だって、虫が食って死ぬようなもの、食いたかねえだろ」
ちゃんと知っていた。
兄ちゃんは、ワケギについたアブラムシをぬるま湯につけたぞうきんで一本一本拭いているのだそうだ(!)ワケギは彼の収入源だ。かるく畝10本分は、拭くんだそうだ。なんともご苦労様なことだ。
「繁殖期に拭き取りゃあよお、もう虫はつかねえんだ」
こういう人がまだいるから、日本はまだまだ底力があるんだろうな。


絵:オリジナル「高尾天狗の孫」

2 件のコメント:

  1. まいうぅーぱぱ2010年10月18日 7:17

    人に優しい原爆。
    アメリカが日本に落とした時、そんな感じだったでしょう。
    これ以上戦争が続くとアメリカの若い「人」が大勢死ぬ、って。
    Japは人じゃないから。

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  2. ほんとに、「やさしい」ってのは、視点をどこに置くかによってがらっと変わっちまう。

    だいたい今の文明の中心になっている民族は、ちっとも地球にとってやさしくないのだ。だから「地球にやさしく」なんて歯の浮いたこと言えちゃうのだ。

    「やさしい」って言葉は、いくらでもいいように使われる。さじ加減でいかようにも使われるのだ。

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