2009年4月12日日曜日

ある昔話





むかーし、むかし。
あるところに、小さな男の子と女の子がすんでいました。
二人は毎日お空から降ってくる、神様からの一つのお餅を分け合って食べ、何不自由なく仲よくくらしていました。

ある時、二人はふと不安になりました。

「もしもこのお餅が、明日降ってこなかったらどうしよう.....?」
そう思うと、急に怖くなりました。そこで二人は、お餅を半分に割って、明日のためにとっておきました。

さて、その次の日から、お餅がお空から降ってくる事は、二度とありませんでした。おわり。

これは南の島に伝わる昔話。

え〜〜〜〜っ、これで終わりイ〜?
と、思わない?

フツー昔話は、最後はハッピーエンドで、めでたしめでたし、となる。
ところがこれは、「二度とお餅が降ってくる事はありませんでした」と、不幸な終わり方をする。

おとぎ話の不幸な終わり方の後ろには、「こうしてはいけませんよ」という戒めのような教えが隠されている。たとえば、オオカミ少年のように、うそをついてはいけませんよ、とか、小太り爺さんのように、欲をかいてはいけませんよとか。(あれ?これじゃメタボ爺さんが、欲かいて太ったみたいだ)違う、もとい。コブとり爺さんだった。

でもこれは、いわゆる備蓄というか、保険のようなもんで、これは今の時代、アリなんじゃないかとおもうのに。
しかもそれをすると神様は「自分で食べ物、とって来なさい」という戒め付き。

今の創作絵本流でいくと、
二人は明日のために備蓄しました。それを見た神様は、「備えあれば、憂いなし」とおよろこびになられました。
と、なりそーな気がする。

いや、ひょっとしたら、下のような言葉が省かれて、伝えられた?
神様は、「うん、二人で備えようとするよいこころがけじゃ。ならこれから、わしはお餅をあげぬ事にしよう」と言われたのかもしれない。

でもなんかへんだ。

これは何か単なるおとぎ話ではない、何か深いものが入っているに違いない。



たぶんそのお話のあとには、こう続くのだ。

それから二人は食べ物を自分たちで手に入れなければなりませんでした。男の子は狩猟に行き、女の子は野から食べられるものを手に入れました。

二人は大人になり、たくさん子供が出来ました。食べ盛りの子供たちを育てるために、野を耕し、作物を作りました。冬の間は、作物が取れません。彼らは少しおおめに作物を作って冬の間に備えました。しかし年によっては、日照りの年もあれば、雨の多い年もあります。二人はもしものために、一生懸命働きました。働いて働いて、食べ物はいっぱいになりました。
 
でもどこか不安が残ります。
「もう少し食べ物を貯めておかないと、なにかあったときにたいへんだ」
そうして二人は、自分たちの食べる分までがまんして、子供たちのために一生懸命残していきました。

冬の寒いある日の朝、お母さんが、雪の上でたおれていました。子供たちのためにと自分は食べなかったために、餓死してしまいました。そのとき、お父さんも山と詰まれた食べ物の下敷きになって、死んでしまいました。

そのとき一つの眩しい光が天から降りて来ました。
光は大きな神様の手となり、二人のからだを包み込みました。二人の魂はからだから抜け出て、神様の前に座りました。

「お前たちには、すでにすべてがあたえられていたのじゃ。案ずるでない。案ずれば案ずるほどその心配や恐怖は膨らんでいき、きりがない。恐怖はこえていくもの。それもまた意志力なのじゃ。すべてをゆだねよ」

神様の姿が消えた時、二人は雪の上に寝ていました。
いつのまにか、二人はもとの小さな子供の姿に戻っていました。彼らは夢を見ていたのでしょうか?一体どのくらい長い夢を見ていたのでしょうか?いやそれはほんの一瞬の出来事だったのかもしれません。

二人は手を取り合って、お空に感謝しました。彼らの心から不安や恐怖は消えていました。
すると一つの白いものが、天からゆっくりと舞い降りて....。

二人はいつまでもいつまでもお空から降ってくるお餅とともに、仲よくくらしましたとさ。

おしまい。


絵:「おもちがぶーっとふくらんで」

4 件のコメント:

  1. 初めて書き込みします。

    死を恐れて、死を先送りしているつもりで、結果として、死に急いでしまっているのが、わたしたちの現実なのではないかと思います。

    お餅が食べたくなりました。

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  2. ピヤパさま

    コメントありがとうございます。

    なかなか鋭いご指摘です。まさにそういう事なのだとおもいます。
    私も石けんなし生活で思ったのは、人は怖れまくっているなあ〜ということでした。で、墓穴をほっている....。

    お餅は力持ち!
    これにもなんかあるんでしょうね。
    ぜひ、もりもり食べてください。

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  3. まいうぅーぱぱ2009年4月19日 22:03

    初めて読んだ話です・・。

    裏読みすると、いろいろ深そうな話。
    単純には、神様を信じないやつには、
    お恵みはなくなります。
    疑うことなく、神のみを信じなさい。
    ということかな???

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  4. そーなると、単なる宗教の押しつけじゃないかー。
    しかもほとんど脅している?
    ほんとはそういうことだったりする?
    もー。

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