2008年8月8日金曜日

ナポレオン


 
ポートレイトを描く仕事は、一番キャリアが長い。イラストレーターになり初めの頃から描いていた。
始まりは実はソープランド嬢の似顔絵を描く仕事だった。毎週受け取るお嬢様方の写真を見ていると、彼女たちの生い立ちや生き方が私の心に入ってくる。しかし出来るだけ楽しい雰囲気の絵にした。
そういうところからきているのか、似顔絵の仕事となると、机の上に描く本人の写真をずらっとならべ、彼らの内面を見ようと意識を集中させる。すると、ふわっと何かの印象が私の脳裏に上がってくる。それは一般的に知られている有名人の印象からはまったく違ったものがやって来る事が多い。
ナポレオンもそうだった。華麗な肖像画の裏に彼の悶々とした複雑な想いが浮かび上がってくる。この人はあまり背の高い人ではなかったのではないか?なんておもいがよぎる。どのみちあまり幸せそうな顔はしていなかった。
そんな私なりの印象を描かせてもらえる仕事のありがたさ。ちょっとクレイジーな私でも役に立つ感性があるのだ、なんておもいながら、似顔絵を描く喜びを味わっている。

ナポレオン:ハーバード・ビジネス・レビュー掲載

0 件のコメント:

コメントを投稿